国務院「3号文書」で他の都市よりも大きな優遇政策を実現

重慶ではどのような開発計画があり、海外企業の誘致にはどのような優遇策を用意しているのですか。

王毅氏

 重慶の発展には海外企業の誘致が不可欠です。そこで重慶は西部大開発を担う直轄市として様々な優遇政策を用意しています。「国家総合配套改革試験区(総合的な改革試験エリア)」の政策、国務院「3号文書」 の政策、内陸保税港区の政策、三峡ダムエリアの優遇政策、少数民族地域の優遇政策、浦東新区や濱海新区に倣った政策があり、政策面において全国でも最も優遇された地域となっています。

 中でも「3号文書」は、薄熙来書記が「鉄を金に変える秘術」にたとえているように、重慶に13の「黄金の位置付け」と22の実質的な価値の高い政策をもたらしました。具体的には、両江新区の設立、長江上流地域の総合交通ターミナル・国際貿易の大ルート・水上輸送センター・金融センターの建設、重慶農村土地総合取引所(国内唯一)の設立、全国初の全国規模の電子手形取引センターの設立、800億元規模の産業発展基金の設立、鉄道・高速道路・港湾・航空など重大プロジェクトの前倒し準備・着工があります。

 特に、新しい開発区である両江新区では土地、財政・税務、物流、金融、技術開発などの分野で、ほかの地域に先行して試験的に政策が実施されています。例えば、国が指定する奨励類産業には企業所得税について15%の軽減税率が適用され、ハイテク製品の生産額に技術収入を加えた額が年間総生産額の6割以上である場合、企業所得税10%以下が適用されます。これは国務院3号文書によって重慶に特別認められた優遇策で、他の開発区ではそれぞれ25%と15%であることと比較すると大きなメリットといえるでしょう。黄奇帆市長は、「3号文書」の政策実施による実質的価値は、2020年までに8000億元以上に達すると述べているほどです。

「両頭在外」から「一頭在外、多頭在内」モデルへ転換

重慶ではどのような成長戦略を描いていますか。

 重慶の成長戦略は従来型の加工貿易と電子情報産業をモデルとした新しいタイプの2つを軸に展開することを考えています。電子情報産業モデルとは、ノートパソコンに代表されるモデルで、「両頭在外」(原材料や販売市場を海外に求める)から、「一頭在外、多頭在内」(販売市場を海外に求め、材料決済、研究開発などのプロセスを国内に求める)といった垂直統合型へ転換するモデルです。

 黄奇帆市長は、重慶を研究開発、関連部品、資本投入、販売・サービス、決済など「スマイルカーブ」の全プロセスを担う加工貿易基地にする方針を掲げています。従来型の加工生産は「スマイルカーブ」の底辺にすぎず、大きな発展は望めないからです。そこで政府の支持を得てオフショア金融を試験的に実施し、最終的には「完成機+関連部品」「製造+研究開発」「生産+決済」を発展させた電子情報産業クラスターを完成させました。

 既にノートパソコンでは、グローバルメーカーであるHP、Acer、ASUSの3社と、OEMメーカーである富士康(FOXCONN)、広達(Quanta)、英業達(Inventec)、和碩(Pegatron)、仁宝(Compal)、緯創 (Wistron)の6社、さらに、多くの関連部品企業を誘致し、「3+6+500」のノートパソコン産業クラスターを形成しました。2011年1-8月のノートパソコン及び関連製品の生産量は、20倍強増加しました。2011年はノートパソコン3000万台が生産され、輸出入額は100億ドルに達しています。

 2011年1-8月の重慶市全体の対外貿易額は151億5000万ドルとなり、全国1位を2つ実現しました。貿易総額が113%増加し、伸び率が全国1位となったほか、輸出が128.3%増加し、伸び率が全国1位となり、全国で唯一、貿易総額が倍増しました。通年では300億ドルに達する見通しです。

 自動車、オートバイ、汎用機械類製品など従来型製品は、重慶市全体の貿易総額の77.1%を占め、自動車の輸出は67.5%増加し、全国2位となっています。加工貿易は3倍の伸び、保税地域の物流は13倍の伸びを示しています。貿易により内陸部における対外開放の要衝建設が加速しており、2015年までに、輸出入額は1000億ドルを超え、サービス貿易は200億ドル、港湾取扱量は累計1000万トンに達する見通しです。

タイトル