パナソニックは、ノートPC事業において中国などアジア市場への展開を強化する。成長著しいアジア市場攻略のカギを握っているのは、主力生産拠点の神戸工場だ。「(工場が)ハードだけではなくソリューションも提供する」と語る同工場長の清水実氏に、同工場が目指す姿を聞いた。(聞き手は、高野 敦=日経ものづくり)

パナソニックの神戸工場
ノートPC本体の組立工程
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 パナソニックの神戸工場は、同社のノートPCである「Let'snote」と「TOUGHBOOK」のほとんどを集中的に生産している。生産工程の他に、コンフィギュレーション(PCの構成や環境の設定)工程を盛り込んだり、修理センターやコールセンターなどを設置したりするなど、幅広い業務を手掛けているのが特徴だ(Tech-On!の関連記事)。

 パナソニックのノートPCの顧客は法人が多く、既存の顧客から「海外でも日本と同じサポート体制の下で利用したい」という要望が寄せられているという。こうした顧客の声に応えられるか否かは、生産から各種サポートまで一元的に手掛ける神戸工場にかかっているのである。

――工場が顧客にソリューションを提供するとは、どういうことを意味しているのでしょうか?

パナソニック神戸工場工場長の清水実氏
正式の役職は、パナソニックAVCネットワークス社ビジネスソリューション事業グループITプロダクツビジネスユニットプロダクトセンター所長である。

清水氏:そもそもパナソニックのPC事業は、PCがコモディティー化する中で独自の付加価値を生み出そうという方針で成長してきました。その結果、ハードではとんがった性能を実現することで顧客に価値を認めてもらえるようになりました。

 ならば、工場では何ができるかと考えたとき、例えば顧客の新規開拓は営業でなければできないかもしれないが、既存の顧客にPCの使い方をレクチャーしたり、PCの買い換えをサポートしたりすることは工場でも十分可能なわけです。神戸工場内にある修理センターやコールセンターも、そうした考え方の中で自然に工場の中に設置されてきました。

 コンフィギュレーションなども、法人向けの製品は代理店で行うのが一般的ですが、パナソニックは全て工場でやります。工場でやれば効率もいいし、配慮が行きわたった形で製品を提供できます。ものづくりの現場がコンフィギュレーションまでやるということで、特に法人の顧客に対しては安心感を与えられます。我々は顧客に現場を見せていますので、そのようなサービスによる付加価値が可能になるのです。

――市場がアジアに広がると、同じようなビジネスモデルを維持するのが難しいのではないでしょうか?

「一品一様カスタマイズ」の概念
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清水氏:市場が広がると、これからは「一品一様カスタマイズ」ということがさらに重要になると思っています。そうした中で、工場の従業員が顧客と直接対話する機会が増えると見ています。ものづくりに携わる従業員でも、もっと顧客側の視点を知らなければならない。

 現実には、修理センターやコールセンターの従業員を除いて、顧客と直接対話できるようなスキルを持つ従業員はそう多くいません。今後は、これまで生産工程を見ていた従業員を修理センターやコールセンターに配置して経験を積ませることなどを検討しています。

出荷直前の新製品が梱包された箱を手にするパナソニック神戸工場工場長の清水実氏