中国における経済発展の中心地である長江デルタ地域。その中央に位置する南通経済技術開発区は、恵まれた立地を生かして発展を遂げてきた。2008年に蘇通揚子江大橋が完成したことで上海とのアクセスが格段に向上。これを契機に一段と発展する機運が高まっている。そこで同開発区の現状や今後の発展に向けた取り組みなどについて中国共産党南通経済技術開発区工作委員会の書記を務める屈宝賢氏に聞いた。(聞き手は三好 敏=企画編集委員)

約160社にも上る日系企業が進出

 南通経済技術開発区の特長は。

屈宝賢氏
屈宝賢氏
中国共産党南通経済技術開発区工作委員会 書記

 南通経済技術開発区は、1984年に最初に指定された14カ所の国家級経済技術開発区の一つです。大きな特長の一つは、長江デルタのほぼ中央に位置しており、立地が優れていることでしょう。南通市は長江と黄海に面しており、中国と世界をつなぐ「玄関口」の役割を担っています。しかも、海路、陸路、空路のいずれも発達しています。

 特に2008年に世界一長い斜張橋として知られる蘇通揚子江大橋が完成したことで、上海まで自動車を使って約1時間で行けるようになりました。そのうえ、万通経済寧啓高速道路、瀋海高速道路と長江沿岸の高速道路が合流する地域にあるので、長江デルタ地域に点在する10カ所の主要都市に自動車を使って3時間以内で行けます。

 空路については開発区の南東15Kmのところに南通空港があります。上海虹橋国際空港や浦東国際空港にも自動車で1時間弱です。港も発達しています。中国の十大港の一つとして知られている南通港は、貨物取扱量が2012年に2億トンを超える見込みです。

すでに20年近くの歴史がある南通経済技術開発区における産業の現状を教えて下さい。

 これまでに、この開発区に進出してきた外資系企業は約700社以上に上り、投資総額は110億米ドルを超えています。進出企業に中には、世界の企業番付で500社以内にランキングされている企業が60社以上も含まれています。

 日本の企業も数多く進出しており、これまでに進出した外資系企業約700社のうち、約160社が日本企業です。投資総額は48億米ドルにも上ります。例えば、進出企業のごく一部を紹介すると、これまでに王子製紙、東レ、日立金属、日立電線、住友ベークライト、三菱レイヨンなどのメーカーが進出してきました。このほか、名古屋銀行などの金融機関や、アニメーションやソフトウエア開発関連の企業の拠点もあります。