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「天上有天堂、天下有蘇杭」(天上に極楽あり、天下に蘇州と杭州あり)と詠われた浙江省の省都、杭州市は、西湖を中心とする美しい景観に恵まれ、新華社の「瞭望東方週刊」が発表する「幸福な都市」ランキングでも、毎年上位にランクインする中国国民憧れの街である。ビジネス対する評価も高く、2004年から2009年まで6年連続で『フォーブス』誌の「中国大陸最良商業都市第1位」に選ばれている。世界銀行からも2003年と2004年の2年連続で「中国都市総投資環境最良都市第1位」に認定された。
 上海とは毎日往復8便ある高速鉄道を使えばわずか78分でアクセスできる。杭州へは日本からの直行便があるのも魅力だ。そして今年10月には杭州初の地下鉄が開通する。杭州はここ20年で急速に工業化が進んでいるが、その原動力となっているのが「杭州経済技術開発区(HEDA)」である。海外の企業も数多く進出し、急速な発展を遂げている。そんな自然と産業のバランスがとれたHEDAの強みについて、副主任の張学寧氏に聞いた。(聞き手は中田 靖=アジアビジネス本部)

中国最良商業都市1位に連続選出

 美しい景観の杭州市は「投資環境に優れている都市」としても有名です。杭州市の発展を牽引してきた杭州経済技術開発区(HEDA)が果たしてきた役割を教えてください。

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張学寧氏
杭州経済技術開発区 副主任

 杭州経済技術開発区(HEDA)は国家級開発区として1993年4月にスタートしました。杭州市は西湖を中心とする美しい景観で知られていますが、この20年近い工業化の中で、産業都市としても知られるようになりました。杭州市の発展はまさにHEDAの発展とともにあります。

 HEDAは杭州市の東部、銭塘江の下流、杭州湾の南隅に位置しており、杭州の「一主三副」という3つの副都心の1つにあたり、市の中心までは車でわずか20分で移動できます。HEDAは104.7平方キロという計画面積のうち、既に34平方キロを開発済みです。中核をなすのが700社を超える国内外の企業が集まる総合工業区で、それ以外にも2009年に竣工したシンガポール科学技術園や現在開発を進めているハイテク孵化器などの専門区を設置して、業態に合わせた効果的なプラットフォームを提供しています。

 HEDAには電子情報産業、機械製造産業、食品飲料産業、生物医薬産業という4つの基幹産業がありますが、それぞれに日系企業が大きな役割を果たしています。例えば電子情報産業分野では東芝が同社の主力製品であるノートパソコンを製造しており、パナソニックは家電製品を製造しています。機械製造産業分野ではコベルコが大型設備を製造しています。食品医薬分野にはキューピーが、生物医薬分野にはテルモやアサヒメディカルが進出しています。HEDAは浙江省の中でも、日本企業が一番多く進出している開発区なのです。

 しかもそれぞれの企業が規模を拡大しています。昨年、進出企業に対して調査をしたのですが、ほとんどの企業が進出時にFS(フィジビリティ・スタディ)を実施した数字に比べ、企業規模、工場面積、社員数が2倍になっているという結果が出ました。進出した多くの企業の満足度が高いのはこうした数字に裏付けられているものなのです。

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