合弁・買収で事業スピードを加速

産業を発展させるにあたって、日本企業との関係は産業誘致型から、R&Dをはじめ技術導入型へと変わってきていると聞きました。

 その傾向は伝統産業の中でもアパレル、家電について顕著です。これらの産業においては労働集約型から研究設計・ブランド経営型へと発展させていきます。今までは世界の工場であったアパレル、家電分野も、意匠設計産業を導入することで、寧波製商品の付加価値を高めていくことを考えています。意匠設計とアパレル・家電などの伝統産業と結び付け、2015年までに、意匠設計産業が120億元(約1500億円)に達する見込みです。

 こうした付加価値戦略を実現するために、寧波では地元企業と日本企業の合弁、日本企業による地元企業の買収を歓迎します。

 中国のアパレル大手である杉杉集団有限公司は、伊藤忠商事の傘下に入ることで、業態を拡大させています。いまでは商社の手法を学んで、アパレル以外にも、資源・エネルギー、電子部品、食糧、金融、不動産なども手掛けています。

 伊藤忠商事と杉杉集団有限公司は三井不動産と新たに「杉井不動産開発有限公司」という合弁会社を設立し、アウトレットモール事業にも進出しています。このアウトレットモールは今年9月23日にオープンしたところです。こうした欧米型の事業モデルも、企業の合弁、買収という形で加速度的に広がっていくことになるでしょう。

市政府と連携した各産業協会が進出を支援

日本企業が進出するにあたって、どのようなサービスを提供していますか。

タイトル

 海外企業が中国に進出する場合の税制面での優遇策は、2007年3月に全国人民代表者会議で批准された「中華人民共和国企業所得税法」によって独資でも合資でも一律です(所得税は一律25パーセントで、国家奨励分野は20パーセント、国家重点ハイテク分野は15パーセント)。ただ寧波では、外資が寧波企業と合弁する場合は、運用面で様々なサポートをしていきます。中でもユニークなのが、市政府がバックアップしている産業協会の存在です。

 寧波は各分野の産業ごとに産業協会があります。日本企業がどういう企業と合弁したいという希望があれば、協会の秘書長を通じて、意向に合った企業を探すサービスを提供します。

 寧波は他の都市に比べて、純粋な民営企業が多いのも特徴です。このため合弁、買収もスムーズに進むのです。今までに寧波で投資した日経企業は600社にも上っており、長期滞在も1000人もいます。中央政府が公認した日本人会もあり、毎月交流会も開いています。我々が知る限り、こうした日本人会を持つ都市はそんなに多くないのではないでしょうか。

 このほかにも、毎年下半期に1週間、「寧波ウイーク」という経済交流会を日本で開催しています。自動車部品、サービス業ではアウトソーシング、観光、教育、人材、技術という様々な分野でセミナーを開催しているので、是非、多くの日本企業に参加していただきたいと思います。

「交通の終着点」から「交通の中継点」へと変貌

杭州湾海上大橋ができて、寧波の物流上のメリットが際立つことになりました。

タイトル

 企業進出を希望される方と面談した際に、寧波以外の候補地として、蘇州、無錫を上げる方が多いようです。確かに蘇州、無錫は上海に近いので精密機器のメーカーが便利ですね。でも寧波には港があるので、原材料がたくさんあって重い設備を必要とするプロジェクトは、寧波港を利用することで物流コストも下げられます。

 さらに杭州湾を南北に縦断する全長3万5673メートルの「杭州湾海上大橋」ができて、上海と車で4時間から2時間の距離に短縮され、「交通の終着点」から「交通の中継点」へと変わりました。港、鉄道、高速の条件が完備した寧波は21の大都市を結ぶ物流の中継点になっているのです。

 物流、貿易だけでも、2015年までに、全市の輸出入総額が1500億ドル(約1兆2000億円)、そのうち輸出880億ドル(約7000億円)、輸入620億ドル(約5000億円)の規模にまで成長させる方針です。保税区、保税港、輸出加工区もそれぞれ2つずつあります。梅山保税港区に寧波コンテナ海運鉄道物流ハブ港などを建設し、全国的物流ハブ都市とスマート物流模範都市の建設も推進していく方針です。

 現在は杭州湾海上大橋を走るのは車だけですが、ここに高速鉄道を通す計画もあります。そうなればさらに上海との距離が縮まり、寧波は長江デルタの中においてもさらに発展していくことは間違いないでしょう。

※ このインタビューにあたっては、寧波市の主要開発区である寧波経済技術開発区の孟祥躍副局長の協力も得た。寧波経済技術開発区は、1984年に政府に批准された中国で最も歴史ある開発区の一つ。2002年には周辺地区と合併し585平方キロに広がるエリアに6つの産業基地、臨港工業産業帯、生態城、保税港区を有する。寧波港を核とすることで臨港型開発区として発展。投資額が1000万ドル(約8億円)以上のプロジェクトは600近くにも上り、1000億元(約1兆2500億円)以上のプロジェクトは8つある。その中でも日新製鋼、三井物産、阪和興業と上海宝鋼集団公司の合弁で作られた寧波宝新不銹鋼有限公司は最大規模のプロジェクトである。