NECの西大氏
NECの西大氏
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 米Apple Inc.が発表したタブレット型端末「iPad」。このような“板型”の端末は今後,続々と市場に登場すると見込まれる。NECも,かねてこうした端末の投入を検討している1社である。2010年中に,組み込み向けソフトウエア・プラットフォーム「Android」を搭載したネット端末の製品化を計画している。これに先駆け,NECビックローブは現在,海外メーカーから調達したAndroid端末を利用してモニター調査を進めている(Tech-On!関連記事)

 NEC 支配人 パーソナルソリューション事業開発本部長の西大和男氏に,板型端末事業の方向性について聞いた。


――ついにiPadが発表されました。

西大氏 画面寸法が5~10型の領域,つまりスマートフォンとネットブックの間には,新たな市場があると考えています。iPadが登場して注目が集まったことで,一つの事業領域として光が当たり始めたと感じます。以前は,この領域に市場があることを一から説明する必要がありましたから。

 9.7型の画面を有するiPadを“出口”とする,新たなエコシステムが構築される可能性があります。例えば,3.5型のiPhone向けより高い表現力を持つアプリケーションが登場してくるでしょう。さまざまな業態のプレーヤーが,この分野に入ってくると思います。

 以前から我々が考えていたのも,まさにiPadのような端末です。Androidを利用して,この領域の製品群を開発していく考えです。

――この領域の端末にとって有望なアプリケーションは何でしょう。

西大氏 電子書籍を無視するわけにはいかないでしょう。2010年1月に米国ラスベガスで開催された「2010 International CES」でも,電子書籍関連の動きが続々と出てきています。明らかに流れが来ています。米Amazon.com,Inc.の「Kindle」などによって,電子書籍市場に注目が集まり,コンテンツ側の動きが出てきたことが大きいのだと思います。

 ただし我々は,電子書籍にとどまらない端末にすることを考えています。Androidを利用するのも,そのためです。

――2009年12月に,ある業界紙の1面で「NECが電子書籍事業に参入」と報道されました。

西大氏 一つのアプリケーションとして電子書籍に着目しているのは確かですが,その報道は飛躍しすぎです。NECが電子書籍事業そのものを手掛ける考えはありません。

 ところが,あの報道を受けて,あちらこちらから反応がありました。それは,「電子書籍」というキーワードが,市場に響いているからでしょう。この領域の端末を展開していく上で,やはり電子書籍というのは最も分かりやすいアプリケーションなのだと思います。

――電子書籍端末の場合,電子ペーパーを搭載するアプローチもあり得ます。

西大氏 我々は,液晶パネルを搭載します。電子書籍にとじない端末を考えていますから,表現力を多様にするためです。もちろん,できるだけ低電力にする技術を搭載していきます。

 液晶パネルの方が,コストをより下げられる可能性もあります。

――国内でもiPadの9.7型という画面寸法は受け入れられるでしょうか。

西大氏 手で持って見るには,10型前後だと大きすぎるのではないかと考えています。主流は7型になると見ています。7型は,カーナビなどで見慣れた大きさです。さらに,“モバイル感”という点でも7型なら問題ないでしょう。NECビッグローブのモニター調査を7型の端末で実施しているのは,それを見極めるためでもあります。

 もちろん,7型以外は手掛けないということではありません。ラインアップをどのように用意するかの話になってきますが,あくまでメインは7型だと踏んでいます。

――この領域の端末にとって,今後の課題は何でしょう。

西大氏 電子書籍端末として考えると,電子ペーパーを利用したKindleなどとは異なり,液晶パネルの特徴を生かしたリッチなコンテンツに対応させていく必要があります。しかし,そうしたリッチ・コンテンツの場合には,単なるテキストとは異なり,表現方法にさまざまなアプローチが考えられます。その辺りのフォーマットやインタフェースを,どのように取り決めていくのか。それは非常に大事なことだと思います。

 また,電子書籍以外に何に使っていく端末なのか。例えば,ヘルスケアに使えるかもしれません。そうした用途を精査していくことも欠かせません。