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全社統合DB構築で柔軟性・拡張性あるシステムを開発,10社以上で導入実績

JFEシステムズ 谷利 修己氏,宮原 一昭氏

2009/12/22 17:31
安保 秀雄=編集委員
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 製造業では,多品種少量生産や需給管理,原価管理,SCM(supply chain management)など,対処すべき課題を抱えている企業が多い。一方,昨今の景気低迷で投資額が抑制されているため,システム投資は費用対効果が高く即効性が得られる案件に絞られている。ただし,その中にはシステム化の範囲が限定され,中長期的経営視点で見た場合は,かえって非効率な投資となってしまうものもあるようだ。

 そこでJFEシステムズは,システム全体のあるべき姿を青写真として描いた上で,費用対効果などのニーズの高いものからシステムを少しずつ段階的に開発し,連携した全社システムを無理なく構築することを提案している。

 そのカギを握るのは,全社統合データベース(DB)の構築である。既に10社以上のユーザーに対して,全社統合データベースを核とした情報システムを構築した実績があるとする。同社取締役専務執行役員の谷利修己氏と常務執行役員SIソリューション事業部長の宮原一昭氏に,このような全社システムの構築方法について聞いた。


問 製造業のシステム開発の現状をどうみていますか。

谷利 修己氏
(画像のクリックで拡大)

谷利氏 以前は,コスト削減や生産リードタイム短縮などの直接的な効果を求める相談が多かったのですが,現在は,需給管理や在庫管理,SCMなど需要変動への対応に関するテーマが多くなりました。製品に対するユーザー・ニーズが多様化し製品寿命が短くなるなかで,欠品や過剰在庫に悩んでいる会社が増えています。

 このような場合,SCM全体の抜本的な改革が望ましいのですが,システムの初期投資を可能な範囲に抑える必要があります。このためSCM全体ではなく,営業部門と製造部門間の調整を行う需給計画/管理システムの開発や,原価管理を品種単位だけではなく顧客単位にきめ細かく行えるようにする開発などを優先的に進めるケースが多いですね。

問 開発時にはどんなことが課題になりますか。

宮原 一昭氏
(画像のクリックで拡大)

宮原氏 需給計画や需給管理に,Excelなどの表計算ソフトを使って孤軍奮闘している企業がまだ多いようです。当初はそれでも良かったのですが,対象製品が増え続けると困難になる場合もあります。ある企業ではExcelで100シート以上になって対応しきれなくなり,需給管理システムを導入しました。

 また,Excelベースですと,営業部門など特定の部門内でのみ利用され,製造部門との連携ができなかったり他部門が利用しようとすると二度手間になったりすることもあります。その場合,Excelベースのものを,営業部門と製造部門との間で必要な情報を共有できるデータベースに変えることができます。

谷利氏 本来は,それらを営業や生産,購買,物流などの全部門が共有可能な統合データベースとして抜本的に構築し直すべきなのですが,システム投資の抑制が求められる状況では,一気には構築できません。

 よって当社ではまず業務を分析し,“全社的な統合データベースの構想”を明確化した上で,需給管理や原価管理などのシステムを段階的に構築し,将来は全社レベルで部門間の情報連携が可能となるようにシステムを構築することが増えてきました。

 情報の一元化という目的で,過去にERPパッケージを導入された企業も多いのですが,データの精度や内容に課題を残されているユーザーも少なくないと見ています。当社は,まずは業務分析とデータモデル作成のフェーズが重要と考えており,ERPパッケージを利用する場合でも,それらの検討結果をベースにシステムを構築し,ERPパッケージは手段として提案しています。

問 統合データベースの構想を描き構築するのは,難しいのではないでしょうか。

谷利氏 確かに容易ではありません。しかし,その企業で管理すべき「もの」や「こと」,製造業で言えば,現品と現場の作業や設備に該当することを,丁寧に分析・モデル化していけば,着実に構築することは可能です。これらの手法で,全社統合データベースを構築した比較的規模の大きなシステムが,既に10社以上で稼働しています。需給管理や原価管理だけでなく生産シミュレーションなども行うように,うまく全社統合データベースを活用することによって,従来から課題になっていた在庫削減やリードタイム短縮,コスト削減も可能なります。

 分析・モデル化の手法をもう少し具体的に説明すると,次のようになります。まず,現場に流れている物や情報の構造をとらえる静的分析を行って,顧客企業のビジネスに必要な基本的なデータを明確化します。次に,それらと業務との対応を動的モデルとしてとらえ,さらに組織との関係を組織間連携モデルで表現していくことで基本となるシステム構造を導き出すことができます*注

注:この方法は,技術データ管理支援協会の「概念データモデル設計法」。

 このようにすることで安定したデータベースを実現でき,その上にアプリケーションを独立して少しずつ構築していくことが可能となります。これによって,環境変化に強い柔軟なシステム構造を実現できます。

 JFEスチールの統合システム「J-Smile」もこの手法を活用しています(関連記事)。全社でデータを共有できるようにしないと,本当の意味での販売・生産・物流の一貫した管理はできません。

 この手法は,プロセス型,組立型と言った製造タイプに依存しません。さらに,製造業に限らず,商社などの流通業の業務分析を行った例もあります。

宮原氏 今回の手法では顧客企業の担当者と一緒に分析やモデル化を進めますが,このような手法に慣れていない企業も多いので,勉強会をやることもあります。先日も顧客企業の工場長や製造ラインの担当者に対して,数日かけて手法を説明し,当社の担当者2〜3人と一緒に議論しながら分析を進めました。現品や設備などを具体的に表し業務の全体像が見えるようになったことは,工場長や担当者にとっても新鮮だったようです。

 すべての案件でこういう作業を行っているわけではありませんが,なるべくこういうアプローチを実施できるようにしています。製造業の情報子会社としてのノウハウをベースに,着実に拡充可能で,無駄にならないシステム投資を提案していきたいと思っています。

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