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Liイオン2次電池の安全対策,「危機回避から危機予測へ進化する」と奥藤氏語る

台湾Celxpert社 技術総監(元NECモリエナジー 取締役技術部長/商品開発部長) 奥藤 忠司 氏

安保 秀雄=編集委員
2009/07/21 18:48
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 Liイオン2次電池は,すでに多くの携帯機器に搭載されているが,機器内の電池の発火事故や不良によって,やむを得ず回収し交換する問題がしばしば発生している。電池メーカーと機器メーカー各社は,信頼性確保や品質保証に力を入れているが,トラブルは根絶できていない。

 Liイオン2次電池の安全設計について,バッテリー・マネジメント回路の設計技術に詳しい,台湾Celxpert社技術総監の奥藤忠司氏に聞いた。奥藤氏は,1987年のカナダMoli Energy社の立ち上げ時から,2次電池の保護回路,充電回路の開発設計に従事し,NECモリエナジーの取締役技術部長,商品開発部長としてLiイオン2次電池の周辺回路の開発を指揮するなど電池パックの安全設計の専門家である。最近は,自動車用の大型Liイオン2次電池の開発や,燃料電池とLiイオン2次電池のハイブリッド電池の開発も手がけている。(聞き手は安保秀雄=編集委員)

問 Liイオン2次電池を格納した電池パックは,現在,どのようなところに使われているでしょうか。

奥藤 忠司 氏
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奥藤氏 1990年代にビデオ・カメラやスチル・カメラ,パソコンなどに大量に使われ,その後,携帯電話機やゲーム機など様々な電子機器に搭載されるようになりました。最近は,電動工具,電動スクーター,電動自転車などにも広がっています。今後は,電気自動車や産業/民生用の定置型蓄電池などへも広がるでしょう。

問 電池パックは,これまでどのように変わってきたのでしょうか。

奥藤氏 Liイオン2次電池よりも前から普及していた自動車用の鉛電池は,過充電や過放電が起こっても危険なことにはあまりならず,安全性から見ると扱いやすいものでした。Liイオン2次電池になると慎重な扱いが必要になり,安全性を高める電子回路技術が不可欠になりました。その後,携帯機器に盛んに使われるようになり,利用効率を高めるためにも,マイクロコントローラによってきめ細かに制御するようになりました。

 今後,Liイオン2次電池の制御技術や回路技術はさらに進展するでしょう。危険を回避するだけではなく,危険を予測するような自己診断システムの実現を目指していくべきだと考えています。

 例えば,セルのバランスが崩れることを予測して対策するようなシステムが大切だと考えています。Liイオン2次電池は,直列にするセルの数が増えるほど,セルのバランスが問題になります。セルのバランスが崩れて電池の電圧が低くなったり0Vになったりした状態で電池を充放電し続けると,発火や発煙事故が起こりやすくなります。これを10年ほど前に指摘しましたが,この問題は保護回路にセル・バランス回路を付加すれば対処できます。

 今後は,保護回路による危機回避だけではなく,こういう現象を予測して対策をすることが重要になるでしょう。並列にセルを並べたときのバランス,電圧やインピーダンスの変動などへの対策も必要です。

 安全設計については,過充電が起こったときの2重のフェール・セーフ機構(セカンド・プロテクション回路)や回路遮断のためのヒューズ素子といった技術を,これまで着実に積み上げてきました。さらにセル・バランス付きの保護回路なども投入され,より安全な設計ができるようになりました。現在も,さらなる改善を試みています。

問 Liイオン2次電池が本格的に普及して20年近く経っていますが,ときどき発火事故や不良による回収事故などが発生しています。このようなトラブルはなぜ,なくならないのでしょうか。

奥藤氏 安全設計の技術は,日々蓄積され進歩しています。しかし,現在は電池技術者と回路技術者,機器設計者の協力関係が十分ではないケースがあるように感じます。昔は,そこそこ協力して開発を進めていました。10年ぐらい前まではセルを供給するメーカーも少なく,各立場の要求をお互いが納得するまで話し合っていたものです。ところが,今は機器メーカーが要求するままにエネルギー容量を上げたり,価格を下げたり,電池技術者や電池パック設計者が振り回されているところもあるように感じます。

 例えば,エネルギー容量を上げすぎてサイクル寿命が犠牲になったり,価格を下げるために安全設計がおざなりになってしまい,事故や不良発生につながったりすることがあります。

 エネルギー容量を上げたいときは,やはりセル数の増加や開発中の材料系で十分な安全テストを行うことが基本です。奇策はありません。電池技術者と回路技術者,機器設計者の間で協力関係を構築し,よく話し合わなければなりません。

 仕様についても,電池側と機器側が話し合った方がよい場合も見受けられます。例えば,ノート・パソコンの電池駆動時間は3~4時間以上も必要なのか,あらためて考えてみるのもよいと思います。今や空港でも飛行機の中でも充電ができます。そんなに長い電池駆動時間がいらない機種がもっと増えてもよいように思います。エネルギー容量で競争するだけではなく,ユーザー視点に立って安全性を考慮することが大切です。

 さらに,大量生産,大量販売,大量廃棄が許されなくなってきたことも配慮したいものです。省エネルギーで重要な役割を果たし,地球環境の保全を担う電池が,大量に破棄されてはいけません。より安全で長く使える電池の開発を目指すべきでしょう。

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