LEDや有機ELを利用した照明器具は,世界的に需要拡大が見込まれており,多くの企業が技術開発を進めている。しかし,効率向上や放熱,安全基準の整備,利用者を適切にガイドする照明の選択基準など,照明器具業界が取り組まなければならない課題もある。新世代の照明器具の現状と課題,今後の開発の方向性について,LED照明推進協議会(JLEDS) 企画運営委員長の下出 澄夫氏に聞いた。(聞き手は安保秀雄=編集委員)

問 LEDを利用した照明器具の現状はどうなっているのでしょうか。

下出 澄夫氏

下出氏 家庭やオフィスで利用するLED照明器具の開発は順調に進んでいます。3月3~6日に東京ビッグサイトで開かれた照明技術や照明器具の展示会「ライティング・フェア 2009」でも,LED照明器具を多くの企業が出品していました(同展示会の関連記事)。

 これは決して一過性のブームではありません。LED照明が照明分野で将来,大きな柱になるとの認識が根付いてきました。白熱灯や電球型蛍光灯を利用した場合に比べ,コンビニエンス・ストアやホテルのロビーなど常時点灯させるところでは,トータル・コストが安くなることがはっきりしてきました。今後,コスト・メリットのある用途が増えてくることも確実です。LEDを利用した新世代照明を,業界をあげて育てていこうという機運が本格的に盛り上がっていると言ってよいでしょう。

 LED照明は,家庭やオフィス,店舗といった建物用の照明だけでなく,自動車や鉄道車両,駅などの交通機関,看板やネオンサインなど幅広い分野に採用されてきています。単なる長寿命,省エネ性だけでなく,コンパクト性,自由配置性があり,直流電源での点灯が可能といった,LEDならではの特徴がいろいろなところで生かされるようになってきました。

熱を制する企業が勝つ

問 LED照明の開発を進めるときにカギとなることは何でしょうか。

下出氏 まず,省エネ性(指標はlm/W)で,LED照明がHf(インバータ)蛍光灯器具を超えるレベルになることが必要と考えています。その時点で,白熱灯や蛍光灯を利用した一般的照明器具すべてがLED照明に切り替わっていくことになります。

 省エネ性を追求する上で,LEDデバイスとしては,チップの発光効率と電源の効率向上が課題です。照明器具としては,熱の制御が大切です。「熱を制する企業が勝つ」と業界ではよく言われています。LEDチップはまだ光取出効率が低く,損失が熱になります。この熱は,寿命を短くする方向に働き,下手をすると長寿命というせっかくのLEDの利点を打ち消してしまいますし,照明器具の総合効率も大幅にダウンします。放熱を意識した材料開発や構造開発が効率向上につながるので,熱を制することが照明器具市場で勝ち残っていく条件になります。さらに,演色性の向上と効率がトレードオフになることがあるので,この点にも注意しなければなりません。

 LED照明推進協議会(JLEDS)は,『LED照明ハンドブック』や,『LED照明信頼性ハンドブック』などを発行し,Webサイトでも公開しています。設計ガイドラインや信頼性の試験方法などの実務情報を掲載しているので,ぜひ活用していただきたいと思います。

安全基準の整備が急務