日経ものづくり キラリ輝く中小企業

仙北谷

切削加工,微細加工の仙北谷
中国進出せず小ロットに特化

 「今度中国に移る。一緒に移転してもらいたい。そうでないと,今後出せる仕事はなくなる」。親会社からそう言われたにもかかわらず,日本に残ることを選択した中小企業がある。
 切削加工,ワイヤ放電加工の仙北谷は,小口のアルミニウム合金製部品やステンレス鋼製部品を得意とする企業だ。しかし現在と異なり,親会社から中国進出を誘われていた1990年代当時は,自動車の電装品のモータを過電流から保護するサーキットブレーカを年間2億個も大量生産していた。親会社に納品するサーキットブレーカの売り上げが全体の8割を占めていたから,中国に出るかどうかはまさに会社の死活問題でもあった。

中国進出の誘いを断る
 仙北谷はもともと1953年にプレス成形専業で創業したが,金型の出来によって成形品の品質が左右されてしまうこと,金型のメンテナンスが大変なことなどから,程なく金型を内製するようになった。それ以来,切削加工技術を蓄積してきている。サーキットブレーカは「どこでもできるような製品で,特に難しいわけではなかった」(同社取締役副社長の仙北谷英貴氏)が,旺盛な需要を見込めた事業だった。生産量を増やすため,同社は自動化にも力を入れた。
 中国進出を親会社から打診された当時,既に自動化は相当なレベルにまで進んでいた。そのまま中国に移転しても,人件費の安さを十分生かすことができない。経費を大きく節減できるという見通しは立てられなかった。


サーモセッタ

熱硬化性樹脂のサーモセッタ
金属と樹脂のすき間を埋める

 サーモセッタは,熱硬化性樹脂に特化した部品加工会社である。設立は25年前の1980年4月。トヨタ自動車グループの東海理化電機製作所のエンジニアだった遠山正春氏(現サーモセッタ代表取締役)が,オンリーワン企業を目指して,樹脂成形の中でもニッチといわれた同分野をあえて選択して創業したことに始まる。エンジンやトランスミッションなどの自動車部品に強く,今では中小・零細企業の多い同業界をリードする。
 機械部品や自動車部品に用いられている樹脂製品の多くは,PA(ナイロン)やPC(ポリカーボネート),POM(ポリアセタール)などの熱可塑性樹脂でできている。熱可塑性樹脂は一度硬くなって形が定まっても,熱を加えると再び軟らかくなる性質を持つ。これに対しフェノール樹脂や不飽和ポリエステル,エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂は,一度硬くなると,再び熱を加えても軟らかくはならず,形は変わらない。
 熱可塑性樹脂は一般に強度や耐久性に劣るが,加工が容易で製造コストが安いという特徴がある。一方の熱硬化性樹脂は,強度や耐久性に優れる半面,加工が難しく,一般に製造コストは熱可塑性樹脂の2~3倍と高くつく。その上,分子は熱可塑性樹脂のように直鎖状ではなく,3次元的な立体構造で網目状に結合しているため,一度亀裂などが入ると壊れやすいという弱点があった。

日経ものづくり キラリ輝く中小企業
●1号ユーザーの床磨き用掃除機に採用された熱硬化性樹脂歯車