日経ものづくり 材料力学マンダラ

第10巻
曲げに強い断面形状は

広島大学大学院教授 沢 俊行


●断面積一定で,梁の最大曲げ応力を減らす
●許容応力一定で,梁の断面積を減らす
●断面形状の選択で,安全性や軽量化を自在に設計


 前回は,梁に作用する曲げモーメントの大きさが,両端を固定する場合と支持する場合で異なることを確かめました。今回は,梁に生じる曲げ応力の大きさが,梁の断面形状によって違うことを確認します。
 こうした計算が重要になるのは,例えば曲げモーメント作用面に対して断面形状の選択を誤ると,大きな曲げ応力が生じ事故に発展する恐れがあるからです。逆に言えば,断面形状の選び方次第では安全性を確保しつつ,軽量化や薄型化といった果実が得られることになります。無論,断面形状の加工効率を十分に考慮する必要はありますが。
 今回は,単純な計算の繰り返しになりますが,?@断面積と最大曲げモーメントを一定とした場合の,断面形状と最大曲げ応力の関係?A最大曲げモーメントと許容曲げ応力を一定とした場合の,断面形状と断面積の関係―を整理しておきます。きっと,設計上の武器になるはずです。
日経ものづくり 材料力学マンダラ
図●各種断面形状
(a)中実円形断面,(b)中実正方形断面,(c)中実長方形断面,(d)中空円形断面,(e)中空正方形断面,(f)中空長方形断面,(g)「I」字型断面。