日経ものづくり ITコンサル日記

業務の形骸化を
判断事例の蓄積で回避

大黒 天馬 Ooguro Tenma
1964年生まれ。愛知県出身。大学卒業後,大手輸送機器メーカーに入社し,主に海外工場の生産システム立ち上げに従事。その後,SCMコンサルタントに転身,現在は大学講師,国内外企業へのITコンサルテーションなど幅広く活動中。


 多くの企業で業務改革に参加してきた経験から痛感するのは,新しい業務手順やルール,仕組みを定着させることの難しさである。
 業務改革を推進するメンバーがリーダーシップを発揮している間は,誤った方向に進むことはまずない。しかし,ひとたびユーザーが自立運用する段階になると,たちまち業務改革は形骸化し,さまざまな混乱が“雨後のたけのこ”のごとく発生する。
 実は「形骸化する」ということは「抜け穴を探す」と同義である。業務プロセスにシステムがさまざまな制約を与える以上,何か例外的な作業をするためには抜け穴を探すしかない。そして,ユーザーが抜け道を探す場面には二通りある。一つは当初想定した実力が現場になく想定外の状況に陥った場合,もう一つは顧客であれ上司であれ,業務改革を意識しない人間からの無理難題に負けた場合である。
 例えば,システム上では製品在庫があるが,倉庫で一部の部品が補修用として勝手に外されてしまい,実際には製品として出荷できない,などは想定外の状況に直面した典型である。

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