日経ものづくり 事故は語る

多発したエレベータ閉じ込め事故
地震で最寄り階に止まるはずが・・・

関東地方を襲った地震でエレベータ閉じ込め事故が多発した。その多くが,地震の揺れを感知してエレベータを最寄り階に停止させる「地震時管制運転装置」を装備したエレベータだった。なぜ,最寄り階で止まらなかったのか。ほとんどのケースで,ドアの開放によって緊急停止させる安全装置が作動しており,これらの組み合わせが事故の原因だった。

 2005年7月23日16時35分ごろ,千葉県北西部を震源とする地震が発生。東京都足立区の震度5強を筆頭に,関東地方の各所で震度5弱を観測した。
 この地震の被害として注目を集めたのが,エレベータにおける閉じ込め事故だ。しかも,閉じ込め事故が発生したエレベータの多くが,地震の揺れを検知して最寄り階にエレベータを停止させる「地震時管制運転装置」を装備していた。78台中73台と,9割を超えていたのである。

最寄り階に止まらなかった
 現在主流となっているのは,ロープ式エレベータと呼ばれるもの(図)。人が乗る箱である「かご」と,釣り合い重りがメインロープによってバランスを取っている。メインロープは最上部にある巻き上げ機の滑車に掛かっており,この滑車を回転することでかごを上下させる仕組みだ。
 エレベータにはさまざまな安全装置が組み込まれており,法律で義務付けられているものも少なくない。例えば,かごの速度が速くなりすぎた場合に非常停止させる仕組みがそれだ。
 さらに,メーカーがより安全性を高めるために開発し,任意に取り付けられている安全装置もある。その一つが,前述の地震時管制運転装置だ。法律で義務付けられていないとはいえ,関東地区では保守台数の6~7割,14万4000台が地震時管制運転装置を設置している状況だ。

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図●エレベータの基本構造
エレベータには法律で定められた安全装置だけでなく,地震の揺れによってエレベータを停止させる「地震時管制運転装置」をはじめとする自主採用の安全装置もある。地震の揺れを検知するセンサは機械室とピットに設置する場合が多い。 〔出展:建築物等事故防止対策部会(第2回)参考資料〕