日経ものづくり 詳報

ホンダ,人の顔に似せたデザインで
2輪車を見つけられやすくする

前方衝突を想定した2輪車用エアバッグシステムは市販車に搭載へ

 細長い白地の中央に円形の黒―。まさに「目」のように見えるのは2輪車のヘッドライトだ(図)。2輪車の前面を人の顔に似せることで, 4輪車の運転者から「見つけられやすく」する「FACEデザイン」である。
 FACEデザインは,ホンダが2005年9月2日に発表した先進安全研究車「Honda ASV-3」(以下,ASV-3)として開発した。今回は2輪車に適用したFACEデザインだが,「2輪車だけでなく,あらゆる移動体に応用できる技術」(同社)だという。

見落としを防止
 2輪車の安全性を向上する上で,4輪車などから「ぶつけられない」ということは重要な要素。2輪車は縦長で小さいため,4輪車に比べて視認されにくいためだ。FACEデザインによって被視認性を向上したのは,4輪車の運転者による2輪車の見落としを防止するのが狙いだ。
 FACEデザインとした最も大きな理由は,人間の脳が目や口など「顔」のパターンに高い反応を示すからだ。また,道路周辺の建築物などを構成する線は,水平方向か垂直方向が大部分を占める。このため,人間は斜め方向の線分を素早く見つけられるということも分かっている。
 そこでFACEデザインでは,ヘッドライトの形状を人間の目に似せて強調し,両脇に向かってつり上るようにした。たれ目ではなくつり目にしたのは「つり目の方が,怒ったようなイメージになって被認識率が高くなる」(ホンダ)ためだ。
 ホンダはFACEデザインの効果を検証するため,多くの4輪車の中にFACEデザインの2輪車が含まれたコンピュータ・グラフィックス(CG)を見てもらい,その中に2輪車を見つけられるかという実験を行った。
 この結果,特に夜間での発見率が大きく向上。例えば,「運転者が視線を固定している時間」(ホンダ)という0.3秒間だけCGを提示した場合,FACEデザインの発見率は従来デザインよりも43%高くなるという結果が得られた。

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図●2輪車の被視認性を向上させる「FACEデザイン」
ヘッドライトを目に見立てるなど,2輪車の前面デザインを人間の顔に似せることで,4輪車の運転者から見つけられやすくする。