日経オートモーティブ 連載

モータ設計を効率化するツール活用・最終回

目的に合わせて 連成解析を実施

自動車用のモータシステムでは、モータ本体と駆動回路、さらに制御技術が複雑に絡み合っている。これまでのような「磁場」や「熱」など、個別要素技術の解析だけでは不十分で、総合的な解析ツールの重要性が高まっている(図)。

アンソフト・ジャパン
シニアアプリケーションエンジニア
重松浩一


 モータシステムにおいて、特に電気・電子機器の解析を行う場合、機器を駆動制御する「回路」を考慮することで、よりレベルの高い、リアルなシミュレーションが可能になる。また、時には回路や応力との連成なしでは解析が不可能な場合さえある。
 しかし、連成解析が容易でないのも事実だ。
 これまでの連成解析手法では、モータモデルを線形の回路素子に置き換えて回路シミュレータに導入する方法や、逆に回路モデルを非常に単純化してモータの有限要素法解析に取り入れる方法が多かった。また、現象をすべて数学モデルで表すことで解析する方法も用いられてきた。
 しかしこうした方法では、例えばモータのモデルを単純化しなければならないなど、適用範囲に限界があった。また、数学モデルで記述した場合は、数式が複雑になり、実際の機器設計や回路設計にフィードバックできないことも多かった。
 このためここ数年、有限要素モデルから回路モデルを抽出し、連成解析する試みが学会レベルで行われている。学会レベルでは、有限要素法による磁場解析で得られた磁化曲線を数式で表現し、回路方程式と運動方程式に組み込んで励磁電圧、巻線電流、トルク-速度特性などの諸特性を計算する手法が提案されている。

日経オートモーティブ 連載
図●モータシステムを支えるさまざまな技術