日経ものづくり 材料力学マンダラ

第9巻
「固定」と「支持」,その大きな違い

広島大学大学院教授 沢 俊行


●固定は固定端に曲げモーメント生じるも,最大値は小さい
●支持は支持点の曲げモーメントゼロだが,最大値は大きい
●固定をうまく活用すれば,軽量化や薄肉化が可能に


 前回と前々回は,その重要性から先を急いで材料力学の応用編であるボルト締結体の話題を提供しましたが,また材料力学の本筋に戻ります。とはいえ,このコラムは本質を拾い上げるマンダラ。講義通りのことはいたしません。
 今回のテーマは,梁に作用する曲げモーメントと支え方の関係。材料力学の後半で登場する円板では両者の関係について言及するものの,梁ではなぜか触れられていない。しかし,両者の関係を知っているのと知らないのでは,実は,設計の幅が全く違ってくるのです。
 図は,土木工事現場で土砂崩れを防ぐ鋼製の矢板,いわゆる鋼矢板をモデル化した梁が分布荷重を受けている様子。ポイントは,近似的に両端に取った支持点が「固定」ではなく「支持」されているという点です。このことを念頭に,鋼矢板に生じる最大の曲げモーメントを計算してみてください。これは,土圧を受ける鋼矢板が壊れない設計をするための重要な計算です。
日経ものづくり 材料力学マンダラ
図●両端支持の梁
分布荷重が作用する。