日経オートモーティブ 連載

車載ネットワーク入門・第1回

新連載

クルマの電子制御が
配線の重量増に

クルマは電子制御で大きく進化してきた。当初の機械制御では不可能なことも可能にしてきたほどだが、恩恵ばかりではない。ECUの搭載数が増大したことで、ワイヤハーネス(配線)の重量増がクルマの軽量化に影響してきたのだ。

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン
トランスポーテーション&スタンダードプロダクツ グループ
車載半導体システム・グループ 技術担当マネージャ
佐藤 道夫


増え続ける自動車
 ある統計によると、2001年における世界全体での自動車保有台数は約7億7000万台で、約7.8人に1台の割合で普及している。4輪車だけに限れば10.4人に1台の割合だ。自動車の世界での生産台数もこの数年で、年間5000万台~6000万台規模に成長し、経済成長の著しい中国、東南アジア、インド、東欧、南米での生産が急速に増大している。
 国内に目を向けると、自動車生産台数は輸出向けも含めて2002年が約1000万台だった。一方、日本の自動車保有台数は約7500万台で、普及率は約1.7人に1台、乗用車に限ると約2.4人に1台となっている。
 自動車がこれほどまでに普及したことで、大気汚染や交通事故の増大など、負の側面も拡大している。このため自動車に対しては、以下のようなニーズが高まっている。

・クリーンな環境への対応:CO2削減、排ガス削減、その他の環境規制、その対応技術の開発など
・予防安全:事故件数の削減、安全走行技術の開発、法規制への対応など
・快適走行:運転支援、渋滞回避、エンターテインメントなど

 自動車の歴史をさかのぼると、現在主流のガソリン自動車のルーツは、ドイツのカール・ベンツ(Carl Benz、 1846~1929年)やゴットリーブ・ダイムラー(Gottlieb Daimler、 1834~1900年)が1885~1886年に相次いで発明したもので、その歴史は約120年に及ぶ。
 図から想像がつくように、当時の自動車はすべて機械的に制御されていた。この発明に使用された自動車の心臓部となるエンジンは、4サイクル・エンジンの原理「オットー・サイクル」で有名なニコラス・オーグスト・オットー(Nikolaus August Otto、 1832~1891年)よって供給されたものだ。

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図●「Benz Patent Motor Vehicle」(1886年ドイツ)
ガソリン自動車の第1号は、各国でさまざまな説があるが、Carl Benzが1886年につくった3輪自動車といわれている。