日経オートモーティブ この会社・この技術

久田工業所
ロールフォーミングを
極め窓枠部品でシェア1位

1960年に設立された切削加工の会社が、ロールフォーミングに目を付けた。この手法を使えば、窓枠やシートレールを鋼板から加工できる。窓枠の中でもセンターピラーを覆う「立柱」と呼ばれる部分に開発と投資を集中し、現在この部品の生産では国内シェア1位を誇る。自動車メーカーの海外進出が進む中、米国でもロールフォーミングの生産が拡大している。

 1980年代以降、自動車市場では多品種化が進んできた。従来からのセダンに、ハッチバック、ステーションワゴンが加わり、さらに車高を高めたミニバンへと増殖していった。
 ブランドを超えてシャシーやパワートレーンの共有化が進む一方で、外装部品に関してはモデルごとの個性を残すため共用化しにくいのが実情だ。中でもボディ外板はサイズが大きいこともあり、厄介な部品といっていい。そこでドアについては、高価な金型を必要とする本体(ドアの下半分)だけをプレス成形とし、ガラスを囲むフレーム(窓枠)は別に作って接合すればさまざまなデザインに対応できる。ドア本体が小さくなるため、物流や生産設備の低コスト化も可能。ただの板金成形に見える窓枠も、実はコスト削減に大きな効果がある。

高コスト体質からの脱却
 「立柱」、つまり窓枠の中でもセンターピラーを覆う部分を年間150万本製造し、国内シェア1位を誇るのが愛知県安城市の久田工業所だ。1977年以来、トヨタ自動車の最量販車種である「カローラ」の窓枠も手掛けている(図)。
 「会社は切削加工メーカーとして創業したが、5年ほどでロールフォーミングなどの塑性加工にシフトした。顧客の依頼に応えたい一心で、生産技術の開発を進めてきた。その積み重ねがこの分野で評価されることにつながった」(同社社長の久田庸平氏)。
 ロールフォーミングとは、何組も並んだローラの間に鋼板を通すことにより、連続的に加工する手法を指す。プレス加工との違いは、閉じた断面を作れること。「金太郎あめ」のように同じ断面を連続的に作れるので、自動車の分野では窓枠やチャンネルルーフ(ルーフに沿って内側に付く部品)、シートレールなどに応用されている。

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図●同社の製品
複雑な断面を持つ窓枠やスライドドア用のレール、シートレールなどを製造する。