日経オートモーティブ 技術レポート

日産自動車の先進技術説明会
4輪アクティブステアを開発
自社製の燃料電池も公開

日産自動車は2005年2月、報道関係者向けに開催した「先進技術説明会」で、4輪アクティブステアや自社製の燃料電池など、開発中の新技術を公開した。経営悪化で縮小気味だった日産の研究開発投資だが、最近の目覚しい業績回復に伴って大幅に拡充していることをアピールした。

 今回公開した「4輪アクティブステア」は、上級セダン「フーガ」で採用した後輪の切れ角を制御する「リアアクティブステア」に加え、前輪のステアリングギア比を可変にしたアクティブステアリングを組み合わせたもの(図)。後輪操舵は、後輪を前輪と同じ方向に操舵することで、車体の横滑りを小さくし、走行安定性を向上させる効果がある。しかし、安定性が増す分、車体が向きを変えるのが遅くなる難点がある。アクティブステアリングと組み合わせることで、走行安定性と機敏な動きを両立することを狙った。
 前輪のステアリングギア比は車速に応じて1:10~1:18まで変化させる。高速走行時はステアリング操作に対して前輪の切れ角は小さくなるが、緊急回避が必要な場合などにはステアリング操作時に前輪を切り増して、すばやく車両の向きを変える。低速走行時は逆に切れ角が大きくなる。駐車時など低速でのステアリング操作量は、アクティブステアを備えない通常の前輪駆動車と比べて、約30%減らせるという。日産はアクティブステアリングを単独で商品化するつもりはなく、必ずリアアクティブステアと組み合わせるとしている。

レーン逸脱をブレーキで警告
 ドライバーが意図せずに、車線を逸脱しそうになると、表示とブザー音による警報とともに、車両を車線内に戻そうとする操作を支援するのが車線維持システム「LDP(Lane Departure Prevention)」。ルームミラーの裏側に設置した1台のCMOSカメラで自車前方の車線を検知し、この車線位置から自車の位置を推定する。もしドライバーが意図せず車線を逸脱しようとしていると車両が判断した場合、各車輪のブレーキ力を制御し、車両の向きを変えることを促す。既に警報だけの機能は北米向けの車種で実用化している。

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図●4輪アクティブステア搭載車
車速に応じて前輪のステアリングギア比を変える。後輪も前輪に合わせて同じ方向に曲げる。