日経オートモーティブ 技術レポート

トヨタ・ハリアー/クルーガーハイブリッド
8割の容積で2.4倍の出力
新開発モータで強力な加速

 トヨタ自動車は2005年3月、ハイブリッドシステム「THS-II」を発展させたハイパワー「THS-II」を搭載したSUV「ハリアーハイブリッド」「クルーガーハイブリッド」を発表した(図)。現行「プリウス」に搭載した「THS-II」をベースとしながらも、モータ出力を2倍以上にするなど、走りの性能を一段と高めた。

 現行プリウスは、初代プリウスの画期的な燃費改善をさらに推し進めるとともに、高い走行性能との両立を目指す「ハイブリッド・シナジー・ドライブ」を開発コンセプトとした。ここで大きな役割を果たしたのは、バッテリ電圧を274Vから500Vに、約2倍に昇圧することで、モータの大きさを増加させることなく、出力を一気に1.5倍の50kWに向上させたことであった。アトキンソンサイクル(高膨張比)を取り入れた排気量1.5L・直列4気筒エンジンの改善もあったが、THS-IIへの進化のポイントは、電気系統を中心としたハイブリッドシステムの進歩に負うところが大きい。

減速ギアを採用
 ハリアー/クルーガーハイブリッド(以下、主にハリアーハイブリッドで話を進める)でもTHS-IIの基本的な構成は踏襲している。ただし、プリウス以上に、ハイパワーであることを目指したのが特徴だ。プリウスのTHS-IIと比較した相違点は(1)プリウスはフロントモータの出力をチェーンでデファレンシャルギアに伝えていたが、ハリアーハイブリッドでは遊星ギア列による減速ギアを介して伝えている(2)既存のガソリンエンジン車の排気量を拡大した3.3LのV型6気筒を利用し、アトキンソンサイクルは用いていない(3)エスティマハイブリッドで初採用となった、後輪に電気モータを用いる4輪駆動のE-Fourを備える——が挙げられる。

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図●ハリアーハイブリッド(上)とクルーガーハイブリッド(下)
両車ともTHS-IIを改良したハイパワーTHS-IIを搭載した。