雑誌 Cover Story

ディーゼルは復活する

田野倉 力
2005/08/16 16:33
 
日経オートモーティブ 特集

【Part1:増殖するディーゼル車】

世界の趨勢に取り残される日本、 消費者の4割が購入に興味

【Part2:最新エンジンはここまで来た】

ガソリン車をしのぐ出力、 クリーンさでもガソリン並み目指す

【Part3:要素技術の進化】

高速・高圧化する噴射システム、 複雑化する次世代ターボ


【PART1】増殖するディーゼル車
世界の趨勢に取り残される日本
消費者の4割が購入に興味

世界の潮流がディーゼル化に向かう中、
日本だけが取り残されつつある。
既に乗用車の半数をディーゼルが占めるようになった欧州。
大型SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)や
ピックアップトラックからディーゼル化する米国。
SUVを中心にディーゼル化が進む韓国。
京都議定書が2005年2月に発効した現在、
ディーゼル乗用車の普及は
CO2削減の有力な選択肢となるはずだ。


 ついにスポーツカーもディーゼルの時代に——。2005年3月に開催された「第75回ジュネーブ・モーターショー(75e Salon inertnational de l'auto de Geneve)」で、DaimlerChrysler社Mercedes-Benz部門は新開発のディーゼルエンジンを積んだスポーツカー「SLK 320 CDI tri-turbo」と「Vision SL400 CDI」の2車種を大々的にアピールした(図)。

ターボを三つ搭載するSLK
 SLK 320 CDIのエンジンは「Cクラス」などに搭載している最新の排気量3.0L・V型6気筒のディーゼルエンジンをベースに3ターボ化したもの。両バンクの外側に小型のターボを二つ、バンクの間に一つの大型ターボを配置し、低速域では主に小型のターボ、高速域では主に大型ターボでの過給に切り替える、いわゆる「2ステージターボ」の一種。ベースエンジンのターボは一つだけで、バンク間に搭載していた。新エンジンの最高出力は210kW 、最大トルクは630N・mで、それぞれベースエンジンの165kW、510N・mを大幅に上回っている。
 一方のSLは新開発のV型8気筒エンジンを搭載し、最高出力は231kW 、最大トルクは730N・mに達する。「SLの名にふさわしいパフォーマンスを備えている」とDaimler社は言う。
 どちらも商品化時期は未定で、技術的な詳細は公開されていないが、スポーツカーにまでディーゼルが波及してきたことは、欧州で乗用車の主流がディーゼルになりつつあることを象徴している。

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図●スポーツカーもディーゼルの時代に
2005年3月に開催された第75回ジュネーブ・モーターショーにDaimlerChrysler社が出展した「SLK 320 CDI tri-turbo」(上)と「Vision SL 400 CDI」(下)。


【PART2】最新エンジンはここまで来た
ガソリン車をしのぐ出力
クリーンさでもガソリン並み目指す

ディーゼルエンジンが商品力を
左右するようになった欧州では、
競争の厳しい高級車クラスで
新型エンジンが相次いで登場している。
一方、品ぞろえで見劣りする日本メーカーは、
まず売れ筋の2.0Lクラスを固める。
軽量化設計や燃料噴射システムなど、
要素技術では欧州メーカーに負けていない。


 かつてのディーゼルエンジンが抱えていた「遅い」というイメージは、欧州の最新ディーゼルエンジンでは完全に払しょくされている。ターボ付きが常識化し、同排気量のガソリンエンジンの出力を上回る例も出始めたからだ。

燃費も出力もガソリンを上回る
 その最たる例が、業界で初めて「2ステージターボ」を採用したドイツBMW社の排気量3.0Lの直列6気筒ディーゼルエンジン。「535d」に搭載して2004年秋に発売した(図)。同エンジンの最高出力は200kW、最大トルクは560N・mで、同じ排気量のガソリンエンジンの170kW、300N・mを大きく上回る。それでいて燃費は15.0km/L(欧州混合モード)と、ガソリンエンジンの10.5km/L(同)よりずっと良い。
 英Jaguar社も、2004年6月に米Ford Motor社が開発した排気量2.7LのV型6気筒の新型ディーゼルエンジン「AJD-V6」を「S-TYPE」に搭載して発売した。S-TYPE以外ではフランスPeugeot社「407」でも採用する予定。二つのバンクにそれぞれ一つずつ可変ノズルターボを装着したツインターボエンジンで、最高出力は153kW、欧州混合モード燃費は17km/L(可変ノズルターボについてはPart 3参照)。同じS-TYPEに積む2.5L・V型6気筒ガソリンエンジンの149kW、12.6km/Lをいずれも上回っている。

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図●各社の最新の高級車用ディーゼルエンジン
(a)ドイツBMW社の排気量3.0L・直列6気筒エンジン。業界で初めて2ステージターボを搭載した。(b)米Ford Mortor社の排気量2.7L・V型6気筒の新型ディーゼルエンジン「AJD-V6」(c)DaimlerChrysler社の排気量3.0L・V型6気筒の新型ディーゼルエンジン。いずれもガソリン車と同等かそれ以上の排気量当たりの出力を実現している。


【PART3】要素技術の進化
高速・高圧化する噴射システム
複雑化する次世代ターボ

ディーゼル乗用車が日本でもう一度市民権を取り戻すには
ガソリン車並みに排ガスをクリーン化することが不可欠だ。
既にそのための道筋は見えている。
燃料噴射装置の進化でエンジン本体のクリーン化を進め、
出力の低下をターボの進化で補うことだ。


 欧州でこれほどまでにディーゼル乗用車が増えた推進力となったのが燃料を噴射するコモンレール式燃料噴射システム(CRS)と、吸気を過給して出力を向上させるターボチャージャの進化である(図)。
 CRSは、燃料噴射の自由度を飛躍的に高め、燃費向上とクリーン化に大きく貢献した(p.147の別掲記事参照)。さらなるクリーン化を進めるには、噴射圧の高圧化と、噴射量やタイミングをきめ細かく制御するための高速化が技術的な課題になっている。
 一方のターボは「遅い」というディーゼルの評価を大きく変えた。現在の乗用車用ディーゼルエンジンではターボは必須の要素技術となっている。Part 2に見たように、自動車メーカーは排気量当たりの出力を高めることに躍起になっており、ターボにはさらなる高出力化と、ターボラグの短縮を求めている。

2008年には250MPaのシステムも
 まず燃料噴射システムのトレンドから見ていこう。先ほども触れたように、CRSの課題となっているのが高圧化、そしてもう一つが噴射弁の制御の高速化だ。燃料の噴射圧を高めるほど燃料を微粒化でき、PM(粒子状物質)の排出量を減らすことにつながる。現在160MPa程度の噴射圧を180MPa程度に高めるのが現在の課題になっている。例えばデンソーは、既に2001年の東京モーターショーで180MPaの噴射圧を実現したCRSを発表し、マツダの欧州向け車種で2002年から実用化している。180MPaのCRSは米Delphi社も既に商品化しているほか、世界最大のディーゼル用燃料噴射システムメーカーであるドイツBosch社も、2006年に商業化すべく準備を進めている。

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図●コモンレール式 燃料噴射システム(CRS)と ターボの技術トレンド
CRSでは噴射の高圧化と制御の高速化、ターボでは2ステージ化と電動アシスト化が進化の方向になっている。(背景写真は、噴射圧が180MPaで、ピエゾ式インジェクタを採用した最新のCRSと可変ノズルターボを搭載するトヨタ自動車「Avensis」)。

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