日経オートモーティブ 連載

組み込みソフト開発の効率化

ECUのパラメータを
「適合」する

ECU(Electronic Control Unit)を使うことで、クルマはより高度に進化してきた。ECUに組み込まれるソフトウエアには各種のパラメータがあり、この値を最適化する作業が「適合」だ。この連載の最終回は、この適合を支援するためのツールについて解説する。

イータス ビジネス・ディベロッパー
マーケティング&コミュニケーション アジアパシフィック・オペレーション
石森 和彦


ますます増大する「適合」の必要性
 今日の量産車において、安全・快適・省エネ・排出ガスの低減などは、ECUによって成立しているといっても過言ではない。ECU内に収められているマイクロプロセッサがなければ、極めて複雑な制御機能やアルゴリズム、例えばガソリンやディーゼルの噴射マップ・コントロール、トラクション・コントロール、高度なクルーズコントロールを実現することはできなかっただろう。
 ECU機能の複雑化、ECU同士のネットワーク化、診断機能の増加は、ECUの「適合」に対する必要性を増大させ、結果として納期と品質、さらにはコストに対する要求を厳しいものにしている。ECUの開発に欠かせない適合を支援するのが「適合ツール」だ。

パラメータ変更で効率化が可能に
 ECUは各種センサからの出力信号を取り込み、演算し、アクチュエータ信号として出力することでシステムを制御している。ECUは様々な状況下でシステム(エンジン、自動変速機など)が最適な性能を発揮できるよう働いている。パワートレーン制御の例では、燃料噴射、点火時期、アイドリング回転数、燃料カット、最高速、過給圧などを、またシャシー関連では、ABSやサスペンションを制御する。
 制御エンジニアが設計するソフトウエアは、パラメータ(定数)を用いたフレキシブルな構造となっている。そのため、同じシステム(パワートレーンなど)のパラメータを変更して別の車に使用したり、特定の車両の部品をまるごと変更することなどが容易になる。このパラメータは「適合データ」と呼ばれていて、この値を最適化することを適合と呼ぶ。
 コントローラ内のデータは、プログラム・コード、適合データ、測定データに分類できる(図)。これらのデータはブロックごとにまとめられ、「ページ」という単位で区切られている。ある機能を拡張していくと適合パラメータの数もそれにしたがって増え、適合の作業も複雑になっていく。

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図●ECUのアドレス空間と適合データ
ECU内には、プログラム・コード、適合データ、測定データがあり、ブロックごとに「ページ」という単位で区切っている。