日経オートモーティブ 連載

顧客の声を商品開発に生かす

顧客志向を追求する
CRMプラットフォーム

これまで企業はいかにして売り上げを増大させ、シェアを拡大するかに苦心してきた。しかし、売上とシェアはビジネスの結果指標である。では、先行指標として何を目指すか。それは顧客を満足させ、自社のファンになってもらう「顧客満足」である。

アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティングサービス アソシエイト・パートナー
生谷 吉之


CRMの原点は顧客指向
 マーケティング理論の第一人者であるPhilip Kotler氏(Northwestern大学インターナショナルマーケティング担当教授)は、今から40年前の論文で、「顧客志向こそマーケティングの本質である」と述べている。そのメッセージは今も色あせていない。顧客をいかに満足させ、継続的な喜びを与え、自社の「ファン」になってもらうか。それが「CRM」(Customer Relationship Management)の原点なのではないだろうか。
 CRMにおいて顧客志向とは永遠の命題であり、究極の目標である。しかし、過去と比べるとビジネス環境は大きく変化している。ビジネスにおいて何が不変で、何が変化してきたのか、これからじっくり考察していこう。

時代の変化に対応する
 急激に変化するマーケット環境を正確に読み取り、分析し、素早く反応することが企業に求められている。そして、拡大成長を目指す企業にとって「顧客志向型」への自社組織の再編成が優先課題であることは、一致している。
 日本経済新聞の報道によると、上場企業の新陳代謝が活発になっているという(2004年10月15日付朝刊)。2001年~2004年の3年間で、全上場企業の1割、300社以上が入れ替わっているの だ。マーケットは企業に対し、急激な変化を求めている。米国では新規上場と上場廃止が繰り返されており、日本の市場も米国型に近づいている。
 連結で売上高17兆円、純利益1兆円を超える、日本を代表する企業であるトヨタ自動車は、海外売上比率が2004年3月期で、66.5%になっている(図)。北米、欧州共に10年前と比較して、販売台数が約2倍になる一方で、国内販売台数が(約204万台から約171万台へ)減少していることを考えれば、企業のグローバル化は成功しているように思われる。ではトヨタにおいて、急速なグローバル化に対応する上で課題はなかったのだろうか。

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図●米国で売れているトヨタ
トヨタの海外における売り上げは66.5%と高い。高級車ブランドLexusは北米で大きな成功を収めている。