日経オートモーティブ この会社・この技術

サイベックコーポレーション
プレス技術で
EPSやCVTを支える

時計会社からプレス加工会社に転職し、プレス技術の将来性を確信した29歳のエンジニアが設立して32年。長野の地場産業である電子製品の製造で蓄積した金型とプレスの技術を武器に、1999年から自動車業界に本格的に参入した。形状が複雑で、かつ精度と強度が必要な金属部品を安く、早く作れると注目を集める。現在では売り上げの8割が自動車関連だ。従業員数は46人で年商は14億円。

 少し前まで絵空事のように思えた新技術が次々と実用化され、量産車に搭載される時代。部品メーカーに求められる技術レベルが高まる一方、激しい競争を背景に車両自体の価格は抑えられたまま。その裏では生産工程の効率化と同時に、部品の品質向上と低コスト化が進んでいる。高品質で高機能、しかも安価。そんな厳しい要求に応えて、電動パワーステアリング(EPS)やCVT(無段変速機)の機能部品に採用されているのが、長野県のサイベックコーポレーションが製造するプレス加工品だ。

金型開発とプレス技術を連携
 サイベックは複雑形状の高精度部品を、プレスで作る技術が特徴のメーカー。複雑な形状の部品は一般にプレス加工に向かないとされ、金属粉を焼き固める「焼結」や金属を削りだす「切削」などの方法で作られてきたが、同社の技術を用いることで多くの部品がプレス加工品で置き換えられるという。
 例えば技術デモ用に作った「フィットモーションカム」は、全体の厚さ6mmの金属板の上層に厚さ2.5mmの非円形歯車、その下層に厚さ2mmのカムを形成した部品だ(図)。裏側にダボ(小突起)、内径にはベアリング抜け止めのリブを設けているほか、カム側面の打ち抜き面は鏡面仕上げになっている。金型に高度な加工技術が要求される仕上げだ。ほかにも、一枚の板を1.2mm厚から0.15mm厚まで連続的に薄くする作業や、3mm厚の板から0.8mmの肉厚の筒を高さ18mmまで絞り出す加工など、三次元形状の成形が同社の得意分野だ。チタン合金や磁性鋼など、特殊な材質の加工にも対応している。
 他社がまねできない複雑なプレス成形を、サイベックはいかに実用化したのか。その秘密は、金型開発力とプレス技術の連携にある。両者がそろって初めて、ダレやバリといったプレスにつきものの不具合のないせん断面や、複雑なプレス加工ができる。

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図●フィットモーションカム
サイベックのプレス技術を凝縮して見せるために作られたサンプル品。非円形歯車、内径の成形、カム形状を成形、最後に側面鏡面仕上げと、多くの工程が組み込まれている。最大の特徴は、非円形歯車を量産できることだ。