日経ものづくり 特報

CADから飛び出す
3次元モデル

日経ものづくり 特報

3次元モデルが開発プロセスを流通するデータの中核となった。 しかし,多岐にわたる用途で3次元CADのすべての機能が必要なわけではない。 逆に,設計工程向けツールである3次元CADの機能では不足する場面もある。 データ形式にも,用途に応じた向き不向きがある。 最適な3次元モデルの活用体制は,CADにこだわらない方が見つけやすい。

 開発プロセスにおける3次元モデルの活用は大きく広がってきた。製品ライフサイクルのさまざまな用途に3次元モデルを活用しようとした場合,設計部門で利用している3次元CADと,それによって作成した3次元モデルをそのままでは使えないのが実情だ。
 3次元CADを導入していない部門ではどのようなツールを利用すればよいのか,3次元CADで作成した3次元モデルが適さない用途ではどのようなデータを利用すればよいのか。3次元モデル活用のニーズが高まるにつれて,CADに固執しない活用法が現実的となってきた。

3次元モデルの多彩な用途
 3次元モデルは形状情報を伝達するだけでなく,材質や加工方法,検査方法なども含む設計情報を伝達する媒体である。そして,その用途はさまざまだ(図)。特に,開発プロセスのコンカレント化が進んだことによって,設計部門で作成した3次元モデルを利用すれば業務を効率化できる可能性が高まった。
 CAD/CAM/CAEと呼ばれるように,CAEやCAMはCADで作成した3次元モデルを活用する代表格。数値シミュレーションの解析モデル,工作機械の加工データ―などを作成するに当たって,既存の3次元モデルを活用するメリットは大きい。
 CAEやCAMはそれぞれ独立したツールとして発展し,3次元化はCADより早かったほど。CADの3次元化が進んだことで,CAEやCAMのユーザーにとって3次元モデルを流用できる機会が増えた。
 ツール面でも,CAEやCAMのCADデータ読み込み機能が充実し,場合によってはツールを統合することで連携を強化している。設計者向けのCAD統合型CAEなどでは,CADの一機能のようにCAEを利用できる。ところが,3次元モデルの活用範囲が広がると,CAD/CAM/CAEの枠組みには収まらない用途が増えてきた。
 例えば,マニュアルの中に表示する製品の外観や内部構造のイラストを,3次元モデルをベースに作成するような用途だ。紙の作業指示書の代わりに,3次元モデルを使ったアニメーションを活用する事例も出てきている。組み立て性の検討も,3次元モデルがあればより正確に実施できる。

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図●3次元モデルの用途
3次元モデルを中核とした設計情報は,設計部門だけでなく下流工程のさまざまな部門でも活用される。用途が異なれば必要な情報の内容も変わってくるため,すべての用途が同一の設計情報(3次元モデル)を必要としているわけではない。