日経ものづくり 特報

中国向け製品
価格勝負は今は昔

日経ものづくり 特報

大量消費国として魅力が高い中国。ただし,単に日本で売れた製品を中国市場に投入しても,中国のニーズにマッチしていなければ不毛の価格戦争に巻き込まれるだけ。利益を出すためには,ダイナミックに変化する中国の事情を正確にとらえ,その事情を満たす機能やサービスを製品に盛り込むことが重要だ。その上で,世界中から参入してくる競合企業に負けないだけの価格競争力も持たなければならない。一筋縄ではいかない中国市場で勝つ秘訣を探る。

 約13億人の人口に加えて,近年の著しい経済発展。中国市場は全世界に製品を供給する企業にとって,最も重要な位置を占めてきた。
 平均所得水準が日本と比べてまだ低い中国では,13億人という人口をそのまま購買層と見るわけにはいかない。とはいえ,年々成長を続ける中国だけに,この先も大量消費国としての魅力が薄れていくことはない。

競合企業が多いことを覚悟
 中国で製品がヒットすれば大きな収益の源となる。既に携帯電話機や家電製品では,世界第1位の市場規模となっている。コンシューマー製品だけではない。2008年の北京五輪,2010年の上海万博を控えており,さまざまな特需が期待できる。
 魅力ある市場だけに,当然競合企業が数多く存在する。日本企業はもちろん,韓国,台湾をはじめとするアジアの企業や欧米企業。そして,低コスト化を得意とする地元中国の企業。オンリーワン製品でない限り,厳しい競争下に置かれるのは必至だ。
 「日本市場で争うなら,主に日本の競合企業の動向を気にすればよい。これが中国市場ともなると,一気に競合企業の数が増えるため,戸惑う日本企業が多い」(在日中国人ジャーナリストの莫邦富氏)。並大抵の努力では,この市場で勝つことは難しい。
 ならば,中国市場で勝つためには,どうすればよいのか。結論は当たり前のことなのだが,消費者のニーズをとらえた製品を,より低価格で提供すること。要は,コストパフォーマンスが高い製品を提供することだ(図)。
 これは,中国市場だけにいえることではない。ただし,競合が多い中国市場では,消費者に選択肢が多い分,より戦略的に取り組む必要がある。
 急激に成長している国だけに,消費者ニーズは目まぐるしく変わる。その目まぐるしく変わる中国特有のニーズを理解することが必要だ。ともすると,日本のメーカーは日本市場で受け入れられたものをワールドワイドに展開する。大筋で間違ってはいないのだが,中国でニーズがない個所に手を掛けている可能性もある。

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図●誰もが興味を持つ中国市場
経済の急激な成長とともに,大量消費国として全世界の企業が注目している。この市場で勝つためにはよりコストパフォーマンスに優れた製品の投入が必要。