日経ものづくり 開発の鉄人

第14回 建て増しならぬ「建て減らし」

「開発の鉄人」こと 多喜 義彦

「介護」は大きなビジネスになる。
人口の動向から,はっきり予測できる。
将来性の点で“手堅い”商売だ。
だからといって,深く考えずに参入することは,
お勧めできない。
金ばかり掛かって,本人がちっとも快適でない
空間をつくる危険性がある。
介護される側に立って考えることを忘れてはならない。


 親を介護するために家をリフォームする工事が増えてきたという。日本人も長生きするからね。もちろん車いすで動き回れるように廊下を広くしたり,段差をなくしたりしてバリアフリーにするけど,それがなかなかうまくいってないらしい。
 島根県にある今井産業という会社が,関連会社で介護の仕事をやっている。介護のお客さんの中で,ほかの建設会社や工務店でバリアフリーにするリフォームをした人がいてね,あまり満足していないらしい。動線が長くて,使いにくいらしいんだ。
 大切な親だから,ベッドの位置はどうしても日当たりの良い所にする。水周りはどうしてもその反対,日当たりの悪い場所になる。それぞれを考えれば正しい設計だよね。ところが,これではベッドからトイレまで行く距離が長くなってしまう。介護のためにリフォームする余裕があるくらいだから広い屋敷だ。ベスト,ベスト,ベストの組み合わせなんだけど,結果として全然ベストになっていない。これじゃ介護する側もされる側も大変だよね。

日経ものづくり 開発の鉄人
図●基本ユニットの平面図