日経ものづくり アイデアコーナー

TOTO編(3) 両開き3面鏡

フレームを介して本体と接続

 3面鏡の袖鏡(両脇の鏡)は内側を軸として開閉する。このため,洗面化粧台で3面鏡を採用した場合には,袖鏡の裏側に収納した物が取り出しにくくなってしまう。
 そこで,袖鏡を左右どちらからでも開閉できる機構を開発した(図)。袖鏡と本体の間にコの字形フレームを組み込み,それぞれとヒンジで結合する構造である。両開きだけでなく,鏡を引き寄せて使うこともできるという付加価値も生まれた。

最初は冷蔵庫を参考に
 両開き機構は既に冷蔵庫などで実用化されている。開く方向によって,開閉の軸となるヒンジ部を固定したり開放したりする構造だ。洗面化粧台でも,最初はこの仕組みをベースに開発を始めた。
 まず考えたのが,ピンを利用した機構。鏡を取り付ける本体の四隅に奥行き方向の穴を開け,左右の穴の間にはアームを埋め込む。穴に差し込むピンの側面にはくぼみがあり,そこにアームの先端がはまり込む。
 ピンを穴から抜くと,ピンのくぼみからアームの先端が外れるためにアームがスライドする。するとロック機構がアームをロックし,反対側のピンが抜けないようになる。ピンはヒンジの片側と一体となっており,片方のピンを固定することで開閉の軸とするわけだ。
 穴の内径が大きいほど開閉はスムーズになるが,穴が大き過ぎるとガタが発生する。ピンが収まったときのすき間は0.2mm以下とする必要があった。
 ところが,隙間を0.2mm以下にすると,閉めるときにピンが穴に入らないという不具合が発生した。鏡の自重によって,鏡の先端部が1mmほど鉛直方向に下がってしまうためだ。

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図●両開きが可能な袖鏡を持つ洗面化粧台
袖鏡を内側に向ければ3面鏡として使えるが,袖鏡裏の収納物は取り出しにくい(a)。そこで,袖鏡を両開き可能とすることで収納物を取り出す際には外開きできるようにした(b)。