日経ものづくり 材料力学マンダラ

第6巻
曲げモーメントを予測する

広島大学大学院教授 沢 俊行


●分布荷重が作用するときは合力の作用中心を探せ
●分布荷重を2度積分したら,曲げモーメントに
●曲げモーメントが作用するボルト締結部をモデル化


 本コラムの第1巻で,技術者には感覚的な「気付き」が重要であることを指摘しました。図面やものを目にしたときに,例えば「ここは危ないんじゃないか」と感じるセンス。こうした気付きが機能すれば,事故は随分と未然に防げるはずです。
 今回のテーマである「曲げ」に関しては,特に最大曲げモーメントが作用する位置やおおよその大きさに気付いてほしい。そこでまず,現実に目にする,次の二つのケースについて比較してみましょう。
 一つは,軟弱地盤を掘削する際に土砂崩れしないよう,掘削範囲の周囲に打ち込む「矢板」と呼ぶ板。もう一つは,ダムの壁。前者の矢板には土砂による力が,後者の壁にはダムにためた水による力がかかります(図)。
 土圧と水圧。一見,同じように作用するように思えますが,実際には違います。土圧は矢板の根元から先端にかけて,逆に水圧は壁の先端から根元にかけて上昇していきます。こうした広い範囲にわたって作用する力を「分布荷重」と呼びます。ここでは,土圧も水圧も,その大きさは0からw0まで直線的に増加するものと仮定しましょう。
日経ものづくり 材料力学マンダラ
図●曲げモーメントが作用する矢板(a)とダムの壁(b)