日経ものづくり 特報・ロボット事故を予見する

ロボット事故を予見する
愛知万博の会場は絶好の実証フィールド

日経ものづくり 特報・ロボット事故を予見する

詳細にわたったリスク分析と
必要十分な設計上の安全対策を実施し,
残留リスクについては運用スタッフによって管理する―。
愛知万博においてNEDO技術開発機構が実施している
実用化ロボットの実証実験。
その安全確保への取り組みは
「事故は起こり得るもの」という考えからスタートする。

 「事故は起こり得るもの」(北九州市立大学教授の杉本旭氏)。
 杉本氏は「愛知万博のロボット安全性ガイドライン調査専門委員会」の委員長を務める人物だ。
 ロボットの安全性を確保できないと意図した言葉ではない。予見できるリスクを設計や運用によって最小化することが最も重要であり,その上であればリスクが残ることは十分にあり,それを明確にするべき―という考え方である。

万博会場は絶好の実証フィールド
 愛知万博の大きな見どころの一つが,最新技術を満載した多くのロボット1)。中でも,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の「次世代ロボット実用化プロジェクト・実用システム推進事業」で開発したロボットはステージ上のデモンストレーションだけでなく,清掃や案内,チャイルドケアといったサービスを実際に提供するものだ。
 愛知万博で技術実証するこれらのロボットは2010年の実用化をターゲットとしており,技術的な完成度は高い。中には,既にモニター家庭などでテストを繰り返してきた実績を持つロボットもあるほどだ。
 しかし,利用環境やユーザーを限定できるモニターと,市販によって一般家庭や街中などで使われるのは別次元。事前知識を持たない不特定多数の来場者にあふれ,約半年間という長丁場で運用できる万博会場は絶好の実証フィールドとなる。