日経ものづくり 特報・革新への近道

革新への近道
「ミドルアップダウン」

日経ものづくり 特報・革新への近道

「経営環境の変化で改善活動の成果が得られにくくなった」
「改善活動を現場任せにしていたら形骸化してしまった」
ボトムアップ型改善活動の限界を叫ぶ声が増えている。
そこで有効となるのが「ミドルアップダウン」の実行系統。
業務に精通し,権限も持っているミドルこそが「革新」の原動力となる。

 「ミドルの技術者が技術者の仕事をしていなかった」。京セラ事業戦略統括部精機事業部長生産技術開発部長の山下洋一氏は,製造部門の過去をこう振り返る。「製造現場を取りまとめる技術者の仕様書の不備を現場でカバーしていたのが実情。作業者のレベルが高いので何とか成り立っていたが,あるべき姿ではない」(同氏)。
 同氏が思い描く「あるべき姿」とは,企画・設計段階から製造技術者が参画し,品質を作り込むことで手戻りを防ぐというもの。作業者の改善に頼るのではなく,技術者が初めから精度の高い製造プロセスにした方が,結果として手間が掛からないし,最終的な歩留まりも高い。
 そこで同社は「歩留まり100%」という壮大な目標を2001年に掲げ,生産革新プロジェクトを始動させた。同社社長の西口泰夫氏が全工場に命じたという*1。「歩留まり100%を前提としていない製造プロセスを,作業者がどれだけ改善したところで,歩留まり100%は達成できない。技術者に技術者の仕事をさせるという意味で,歩留まり100%は格好の目標だった」(同社の山下氏)

日経ものづくり 特報
●品質の作り込み
従来の姿(a)と,あるべき姿(b)。従来は,仕様書の不備を直接作業者のような現場の人間が改善することで,まずまずの歩留まりを確保してきた。ただし,現場の改善だけでは「歩留まり100%」のようなブレークスルーは見込めない。初期段階で品質を造り込むのが,本来あるべき姿。