日経ものづくり 直言

ものづくり復活の原点
工業高校が半減する危機

 昨今,工業高校が非常に気になる。工業高校への世間の関心は著しく低下しているように見える。自身が地元の工業高校のOBである中小企業の経営者も「今どきの連中は」と突き放しているようだ。
 私の世代では,勉強ができても家庭の事情から工業高校へ進む,という子供は少なくなかった。彼らはその後「現場」の中核として育ち,日本の高度成長を支えた。だが,豊かになり,少子化が進む現在,工業高校は不当な位置に追い込まれている。首都圏では「普農商工」などという言葉が流通し,偏差値で輪切りにされた子供たちが不本意ながら工業高校に押し込まれている。現在,特に首都圏では工業高校に入りたくて受験する子供はほとんどいない。

日経ものづくり 直言
一橋大学大学院教授
関 満博

1948年生まれ。専修大学助教授などを経て,1998年一橋大学教授。主な著書に『現場主義の知的生産法』など。中小企業論,地域経済論の第一人者。