日経ものづくり 開発力強化の方策

第1回 開発プロジェクトの立ち上げ方

肝心なのは根拠のある計画と
見える形での技術の共通認識

北山 厚
アイティアイディコンサルティング
シニアマネージングコンサルタント

開発・設計部門の力は,これまで詳しく評価されることがなかった。これに対し,“開発力”という視点からアンケートを実施,その力を定量化するというユニークな取り組みが行われた。調査の対象となった設計者は約2000人。その回答結果には,日本の製造業が進むべき道のヒントが隠されている。設計現場の声からあぶり出された開発力向上のポイントを,今号から3回にわたって提示してもらう。


 日本の製造現場の強さは昔から定評があり,今もその強さは継承されている。その一方で,優れた商品を生み出す“開発力”に関しては,20~30年前まではトップクラスにいたのは間違いない。しかしその後は,後進国の台頭などもあり,決して胸をはって秀でているとはいえない状況になっている。製造業に明るい兆しが見えている現在,ものづくり大国としての日本の地位を確固たるものとするには,開発力を一層強化することが望まれる。
 しかし,開発力を強化するために,的外れの努力目標を立てたり,投資したりしても意味がない。開発・設計部門として本当に何を改革すれば開発力が強化されるのか,その指針となるものが必要だ。
 アイティアイディコンサルティング(本社東京,以下iTiD)は,製造業に携わる設計者1890人に開発力に関するアンケート調査を実施,その結果を「開発力白書」としてまとめた。
 この白書を分析することで,開発力を高めるためには何が必要とされ,今後どのような点を重点的に改善すべきかが明らかになってきた。本連載においては,この調査結果を基に,iTiDが各種のコンサルティングを通して培った経験による考察を織り交ぜながら,開発力向上のポイントを述べる。第1回目の本号では,開発プロジェクトのスタート前およびスタート直後の業務にフォーカスを当てる。
日経ものづくり 開発力強化の方策
●製品の性能にかかわる評点の推移
三つの事業所の回答結果を比較した。各社の評点の差はプロジェクトスタート初期の点差がほぼそのまま後半まで継続されているのが分かる。