「もうこれまでのやり方では通用しなくなる。ならば新たなアーキテクチャで勝負する」(ある半導体メーカーのアナログ回路設計者)。

 数GHzの超広帯域を利用するUWB(ultra wideband),高周波のアナログ回路までをCMOSチップに集積してしまう1チップ・ケータイ,60GHzという高周波信号をCMOSチップ上で増幅処理するミリ波帯無線,水中でも使えるRFIDタグ(p. 72の「進化を遂げるRFIDタグ,DNA検出用に光センサと合体」参照)。無線通信におけるこれらの新たなアプリケーションは,回路設計の常識を大きく超えるもので,従来のやり方では到底太刀打ちできない。

 こうした革新的な用途の出現を受け,無線通信の回路設計に新たな考え方を導入しようという動きが開発現場で加速している。2005年2月6日から米国サンフランシスコで開催された半導体技術の国際会議「ISSCC 2005」では,無線通信分野において,新たな回路アーキテクチャの提案が相次いだ。

 もともと無線通信の発表には定評のあるISSCCだが,今回は全セッションの1/3を無線関連が占めた。CMOS回路設計において,無線通信分野への取り組みが盛んになっていることを如実に示す格好となった。