服部 励治
九州大学大学院助教授

アクティブ・マトリクス型有機EL(electroluminescence)パネルが,液晶パネルのコストを意識した駆動技術の改善に向けて動き始めた。液晶パネルの性能が向上したことで,「競争に勝ち抜くためには,液晶パネルと同等以下の価格を実現する必要がある」という認識が,有機ELの開発側に広がっているためである。低コスト部品の採用や部品点数の削減につながる駆動技術の開発が急速に進んでいる。2004年12月に開かれた「2004 International Display Workshops(IDW'04)」では,こうした開発の成果が有機ELパネル・メーカーから相次いで出て来た。(本誌)

 アクティブ・マトリクス型有機EL(electroluminescence)パネルが,低コスト化に向けた駆動技術の改善に動き出した。有機ELパネルは視野角依存性がなく,薄型にでき,黒がよく沈むという特徴を持つ。しかし,既に液晶パネルがある程度こうした性能を満たしている現在では,液晶パネルに比べて価格が何倍も高くなっては市場に受け入れられにくい。有機ELの市場が完全に液晶パネルと競合していくことを考えると,コストは同程度か,それ以下であることが望まれる。

 そのような状況の中で,2004年12月の「2004 International Display Workshops(IDW'04)」では,有機ELパネル・メーカー数社がコスト意識を強く持ち,新駆動技術の発表に臨んだ。有機ELには以前から低分子か高分子かという対抗軸があるが,コスト意識が強まったことで,(1)デジタル駆動vs.アナログ駆動,(2)電流プログラムvs.電圧プログラム,(3)アモーファスSi(a-Si)TFT vs. 低温多結晶Si(p-Si)TFTという三つの対抗軸が新たに加わった。