特報
増える外部人材 変わる人材活用

正社員を減らしすぎれば競争力基盤は低下する

ものづくりの現場で,請負社員や派遣社員といった外部人材の活用が活発になってきた。生産変動への柔軟な対応やコストの削減といったメリットがあるからだが,その一方で製品の品質や技能の伝承などの点が懸念されている。本稿では,ものづくりの現場への最新アンケート調査を基に,東京大学社会科学研究所が人材活用の実態を分析し,競争力基盤を維持・強化するための今後の人材活用戦略を明らかにする。(本誌)


 ものづくりの人材活用の仕組みが大きく変わってきた。特に変化が生じているのは,現場の主な担い手である。1980年代はメーカーと協力会社のそれぞれが直接雇用する人材が中心だったが,1990年代にはそこに請負社員や派遣社員といった人材ビジネス会社が雇用する人材が加わるようになってきた。彼ら彼女らは,製造業にとっては直接雇用関係のない「外部人材」にほかならない。

 日本のものづくりの競争力はこれまで,メーカーが自社で雇用し育成した人材のスキル(職業能力)により支えられてきた。その好例が,日本企業の強みの一つである,品質の「工程での作り込み」。そこには,(1)標準作業方法に従って仕事を進める職務遂行能力(2)良品と不良品を識別できる判断能力(3)不良品が発生した場合に,その原因を分析し問題を改善できる分析・改善能力-に裏打ちされた製造現場の高い技術力がある。

 こうしたスキルは,製造部門に所属する社員が会社内における長期のキャリアを通して,幅広い仕事の経験と理論的な知識の習得により身に付けたものだった。

東京大学社会科学研究所客員助教授
佐野嘉秀