雑誌 特集

ニセモノに勝つ

杉木 あさみ=Tech-On!
2005/01/26 17:28
 

特集
ニセモノに勝つ


 「ニセモノ」─。知的財産権を侵害した製品の総称だ。今,中国や韓国,台湾を中心としたアジア市場でニセモノが激増し,日本メーカーに大きな被害を与えている。高機能かつ高品質でブランド力も優れる日本メーカーの工業製品は,ニセモノメーカーにとって格好の模倣対象だ。裏社会であるニセモノ業界では「日本メーカーのニセモノは,麻薬ビジネスよりうまみがある」ともささやかれているという。この事態を放置すれば,日本メーカーは売り上げの減少を招くばかりか,ブランドをも傷つけかねない。ところが,「日本メーカーは危機意識が薄すぎる」という指摘が多い。ニセモノが与えるリスクについて,現状と未来のシナリオを描くとともにニセモノ対策に成功を収めている先進メーカーの事例に迫る。(近岡 裕)

「麻薬より儲かる」ニセモノ業者が日本メーカーをカモにする理由
Part1 破壊力の検証

日本メーカーの知的財産権を侵害した製品,いわゆる「ニセモノ」。そうしたニセモノを製造する企業がアジアを中心に急増している。日本メーカーの被害額は「利益ベースで1兆円」という試算もある。にもかかわらず,危機意識の希薄な日本メーカーが目立つ。

 日本メーカーにとっての「最悪のシナリオ」がある。メーカーが所有する貴重な知的財産権を違法に侵害した製品,いわゆる「ニセモノ」が与える被害の大きさを端的に表すものだ。
 ブランドに定評がある日用生活用品メーカーA社が,ある製品を中国の北京市場に投入した。相当人気の商品で,当初のシェアは極めて高かった。ところが,この製品を違法に模倣してニセモノを造った現地のメーカーが「ホンモノ」より低価格でそのニセモノを市場投入するや否や,A社の真正品(ホンモノ)のシェアは見る見るうちに急落。1年後にはA社のシェアは当初の1/4近くにまで落ち込んだ。A社は売り上げの減少による利益の目減りに耐え切れず,やむを得ず値上げを実施。すると,逆効果で価格の上昇を嫌った顧客がホンモノから離れ,A社のシェアは一時,当初の1/8近くにまで低下した。その後,8カ月間ほどは当初のシェアの1/4前後で低空飛行が続き,やむなくA社は再度値上げを実行する。これにより,顧客のホンモノ離れは加速し,A社のシェアは当初から9割以上減少した3%まで落ち込んだ。それからしばらくして,A社はこの製品の販売をあきらめ,市場からの撤退を余儀なくされた--。

敵から学び攻めに転じる
狙いはものづくり力での圧倒
Part2 一歩先行く対策

知的財産権をできる限り権利化し,「ニセモノ」を見つけ次第摘発する。この基本を踏まえた上で,先進メーカーは独自の対策を練り始めた。敵と組んで味方につける,妥協せず徹底抗戦する,優位な領域を選ぶ--。勝利への近道は,ものづくり力を鍛えて,ニセモノを圧倒することだ。

 中国市場でニセモノ・バイク・メーカーの前に防戦一方だったホンダが今,反撃を見せている。2004年12月末,商標権の侵害をめぐる大型の訴訟で,2件立て続けに勝訴したのだ。
 まずは12月20日付の判決で,北京市第二中級人民法院は,ホンダの商標「HONDA」に酷似した「HONGDA」のマークを使用したバイクを製造・販売する中国・重慶力帆実業集団に対し,「HONGDA」がホンダの商標権を侵害していると認定。重慶力帆に対し146万8602元(約1800万円)の損害賠償をホンダ側に支払うように命じた。併せて,同法院は重慶力帆に対してHONGDAマークの差し止めを命じ,同社が今後この商標をバイクに付けて販売することはできなくなった。

中国よりも安く造る方法はある
秘策はニセモノの“コピー”
Part3 技術者への警鐘

圧倒的なコスト競争力を持つニセモノメーカーに「勝つ方法はある」と訴える本誌コラム「中国的秘密・日本的秘策」を執筆する遠藤健治氏。カギを握るのは技術者。自ら技術者として今なおニセモノと闘っている立場でそのために必要な方法から“秘策”までを明かす。

 「日本メーカーの技術者はあまり危機感を持っていない」というのが,私の正直な感想だ。中国市場では日本メーカーの製品を違法に模倣した「ニセモノ」があふれている。それだけではなく,そうしたニセモノは中国から世界各地に輸出され,世界市場においても日本メーカーの正当な利益や,長い時間を掛けて築いてきたブランド力を奪っているのである。にもかかわらず,日本メーカーの技術者の多くは「大したことはない」と高をくくっている。その最も大きな原因は,日本を拠点に働いている技術者が「中国の本当の姿」を知らないことにある。

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