「大学発ベンチャー1000社が目前に」「産学の共同研究件数はほぼ1万件に」…。産学連携のプロジェクトは着実に増えている。まずは研究をスタートさせたものの知的財産の権利保護に関する問題が後回しになっている例もあちこちに見られる。将来に火種を残さないためには,知財問題の早期解決が急務といえる。

第1部
東北大での反乱に見るボタンの掛け違い

米国に遅れること20年,日本も大学の研究成果を産業界に応用しようと動き始めた。数字上は盛り上がる産学連携もその実情は混沌としている。独立行政法人化をキッカケに知的財産力の強化を図る大学が権利主張をするあまり,産業界との関係がぎくしゃくした例がそこかしこに見られる。特許をめぐる企業と大学の考え方の相違が混乱の要因となっている。今こそ企業はポートフォリオを示し,大学は特許を理解する時である。産業界と大学が腹を割って語り合うところから産学連携の成功事例が生まれるだろう。

第2部
成功事例に学ぶ正しい連携の勘所

「先生の多くはかすみを食べて生きている」——。
ややもすると大学はこう揶揄やゆされる。
産学連携の事例が増えてはいても,いまだ大学の実力に疑問符を付ける技術者がいる中で,ちらほらと成功事例も出てきた。しかも白物家電から半導体,電子部品,燃料電池とその範囲も広範だ。動き始めた産学連携から1つでも多くの成果を生み出すためにも成功事例に学ぶことは多そうだ。

第3部
大学にくすぶる火種 教授の特許は誰のもの

国立大学などの独立行政法人化に伴い教授の発明は原則,機関帰属になる。それが故に問題になるのが知的財産の扱い方である。特許を大学が運用する上で問題になりそうな点は2つある。大学教授が「相当の対価」を求めたらどう対処するのか,大学発ベンチャーで発明した教授の特許はどこに帰属するのか,である。産学連携を円滑に進めるためには,こうした課題の解消が欠かせない。今後数年のうちに大学ごとの特色が出ることになりそうだ。