ドキュメント
ケンウッドの生産革新(最終回)

3日後には生産開始だ

カー・ナビゲーション・システムを生産するのは,山形ケンウッドにとって初めての経験。しかも,生産開始までに残された時間は短い。年末年始の休暇を返上した1週間の出張で, 従来の生産拠点からノウハウを伝授された。山形ケンウッドにカーナビの生産ラインの設備が到着したのは2004年1月11日の早朝。生産を開始する2004年1月14日まで,あと3日間しかなかった。

「平親はまだか?」

 2004年1月6日,午前6時。高橋健一郎は斎藤慎一,富樫孝とともに,山形ケンウッドの玄関前に止めたクルマの中で平親礼行を待ち続けた。

 窓の外を見れば,雪が降り続いている。暖房を入れた車内とはいえ,寒さが染み渡ってくる。

「すみません,遅れました」

「なんだ,寝坊か」

「いや,そういうわけでは…」

「とにかく出発するぞ」

 4人が向かう先は兄弟会社の長野ケンウッド。クルマで6時間の距離だ。今日から1月10日までの5日間で,カー・ナビゲーション・システム(以下カーナビ)の生産を開始できるだけのノウハウを身に付ける必要があった。