短期連載・競争力を強化するコストマネジメント再考
第1回 コスト削減にも限界がある

奇策はもうない,戦略的取り組みで効果を得る

日本の製造業は,ものづくりにおいては今でも世界のトップレベルを誇っている。その一方で,現場の努力に頼ったコスト削減策に限界を感じている企業が多い。今のコストを何%削る,という観点ではもはや戦っていけない。PLM(製品ライフサイクル管理)の大きな目的の一つである,戦略レベルの「コストマネジメント再考」を提言してもらう。(本誌)

 日常業務もしくはプロジェクトにおいて,日本の製造業のほとんどがコスト削減に取り組んでいる。多くの部品メーカーは,常に完成品メーカーからの値引き要求にさらされている。例えば自動車メーカーは,モデルチェンジのたびに30%のコスト削減を部品メーカーに要求するようになっている。さらに2~5%ずつの年低*1を要求する。系列の部品メーカーは,この値引き要請を断れない。

 完成品メーカーもコスト削減は系列の部品メーカーに頼るところが大きい。値引き要請をして調達コストを下げるか,部品メーカーが開発した画期的な新技術・素材によってコストを下げるか。残念ながら後者にはなかなか遭遇しない。

 さらにはコスト削減を要求しておきながら,その影響で経営難に陥った系列企業に資金提供を行い支援するという,何とも不思議な構造が成り立っている。結果として共に体力を消耗してしまい,コスト削減を行う体力を枯渇させてしまうケースも出てくる。

原田浩平
ネクステックプロジェクト推進部 ディレクター
牧田恵理子
ネクステックプロジェクト推進部 コンサルタント