コンサルタントの視点
第一電気社長 佐藤 寛氏
1955年に第一電気を創業。計測用磁気テープ装置、FM多重記録方式のデータレコーダの開発などを経て、1994年に世界初の制御弁を使わない油圧制御装置「ハイブリッド・アクチュエータ」を開発。

 最近の自動車は、電子制御化が急速に進んでいる。ブレーキのような重要な保安部品でも、完全に電子制御のものが登場し、さらには、先行車や歩行者と衝突しそうになると、自動的にブレーキがかかるシステムすら実用化が進んでいる。しかし、こうしたシステムを支える電子制御の開発の現場は、技術の進化に追いついているのか、いささかの不安を覚える。

 自動車メーカーではないが、私が技術顧問をしている大手産業機器メーカーの技術担当役員から、最近こんな話を聞いた。「うちの会社には、もう制御技術者がいない」というのだ。そんなはずはない。そのメーカーでは、電子制御システムを開発している技術者はごろごろいる。そこでその役員に真意をただすと、こんな答えが返ってきた。

 「今のエンジニアたちは、制御ソフトを開発するためのツールを操るオペレータではあっても、それ以上ではない。もし、そのツールにバグがあったとしたら、もうお手上げになってしまうのだ」という。当社は50年以上前、油圧サーボ弁を発明した米Moog社向けに、サーボ弁を制御するためのアンプを最初に開発し、当初は独占的に納めてきた実績がある。油圧制御では、草分けの企業の一つだと自負している。ソフトにバグがあるのは当たり前、もし不具合があったら、場合によってはOS(オペレーティングシステム)にまでさかのぼって直すのが当然、そういう意識で制御システムの開発に取り組んできた。

以下、『日経Automotive Technology』2014年1月号に掲載