ダイハツ工業は、軽乗用車「タント」を全面改良し、2013年10月に発売した(図1)。これまで左後ろだけだったスライドドアを右後ろにも採用するなど70kg分の装備を増やしながら2輪駆動「X」グレードの車体質量を従来と同様の930kgに抑えた。価格は同グレードで117万円と、実質5万円値下げした。
スライドドアを閉じる機構とロックを外す機構を一つにまとめるなど、構造を合理化してコストを下げた。
70kg軽くしたうち10kgは樹脂を採用した分。フードとバックドアはインナ、アウタの2枚を接着剤で貼り合わせた構造で、アウタがPP(ポリプロピレン)製。インナはフードがSMC(シート・モールディング・コンパウンド)製、バックドアがガラス短繊維を25~30%加えたPP製(図2、3)。フードはエンジンからの熱を受けるため耐熱性が必要で、SMCを選んだ。なお、フロントフェンダはPPの1枚ものだ。
スライドドアのレールの上のカバーはAES(アクリロニトリル・エチレン・スチレン)製。AESはよく使うABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)に近いものだが、耐熱性が高いのが特徴。今回は耐熱性でなくガソリンに対する耐油性を評価して採用した。表面は塗膜に覆われているが、裏側はガソリンが直接かかる可能性がある。
今回樹脂化した部品はすべてエイエフティー製。同社はダイハツが35%、ダイキョーニシカワが65%出資して設立した樹脂成形品メーカー。滋賀県蒲生郡竜王町にあり、ダイハツの滋賀(竜王)工場に近い。エイエフティーで塗装まで済ませてダイハツに納める。エイエフティーの生産能力はまだ十分にあり、今後多くの車種に樹脂製外板を採用していく考えだ。ただし、工場立地も含めて経済性を評価しているので、九州工場で造る車種については物流コストが問題になるといい、別のやり方を考えるとする。