Part2:オンリーワンだから選ぶ

先行して量産、他社の参入を許さない
注文を待つのでなく、提案する

オンリーワンの製品があれば、完成車メーカーはそれを使うしかない。日本、海外の問題ではなく、ほかに選択の余地はないからだ。オンリーワンを実現するカギは、技術力だけとは限らない。商品を投入する決断、思い切って投資する判断、浸透するまでじっくり育てる粘り。どれも海外メガサプライヤーに見習うべき要素だ。

 アイドリングストップシステムを組むためにスタータ/ジェネレータが欲しい、DCT(Dual Clutch Transmission)と組み合わせたハイブリッドシステムを組むために変速機の操作機構やデュアルクラッチが欲しい、2モータのハイブリッドシステムを組むために動力断続機構が欲しい…。

 日本の完成車メーカーがこれらの部品を欲しいと思っても、海外のメガサプライヤーから調達するしかない。日本のサプライヤーに製品がないのだから選択の余地はない。

 どうしてこんな差がついてしまったのか。原因は日本のサプライヤーと海外のメガサプライヤーの仕事の進め方の違いによる。海外のメガサプライヤーは自ら開発し、できたものを多くの完成車メーカーに売り込む。これに対して日本のサプライヤーは特定の完成車メーカーからの依頼、場合によっては指令に従って開発をすることが多い。売る先は、依頼したメーカーが優先になる。

 日本のサプライヤーが完成車メーカーの方を向いて仕事をするのは会社の成り立ちとして仕方がない。当事者を責めることはできない。日本のサプライヤーの多くは完成車メーカーの関連会社なのである。

 デンソー、アイシン精機といえば売り上げでは世界の自動車部品メーカーの1位と4位であり、立派なメガサプライヤーだが、トヨタ自動車が株式のそれぞれ24.9%、22.2%を握っている。トヨタ系では、トヨタ自身とトヨタ系部品メーカーを合わせた持ち株比率が20%を超える部品メーカーは40社を超える。“ケイレツ”健在である。トヨタ出身の役員も多く、トヨタの方を向いて仕事をしたとしても、ある意味当然だ。

 これに対して海外メガサプライヤーは独立性が強い。世界2位のドイツBosch社は92%を創業者一族のRobert Bosch財団が、9位のドイツZF社は93.8%を飛行船で名高いZeppelin財団が持つ非上場企業。完成車メーカーの資本は入らないし、四半期ごとの利益で経営陣が評価されることもない。

 取引先についていい例が米Tenneco社の“全方位外交”である。同社の販売額のシェアは米GM社が16.9%、米Ford社が14.6%、ドイツVolkswagen社が7.6%、ドイツDaimler社が6.2%、トヨタが4.4%、中国上海汽車が3.0%。もともと米国の部品メーカーであるため、さすがにGM社、Ford社が1位、2位に並ぶが、世界中に万遍なく部品を供給していることが分かる。ケイレツとは程遠い世界である。

 会社の成り立ちとしては不利でも、日本のサプライヤーもオンリーワン商品を造っていかなくては勝てない。注文を待つのでなく自ら提案する力が必要だ。高い技術力を使ってオンリーワンを実現することも重要だ。

 これから海外メガサプライヤーの成功例を見ていくが、「製品をタイミング良く発売する」「思い切って生産設備に投資し、量産規模による価格競争力を築き上げてしまう」「時間をかけて粘り強く浸透を図る」といった、技術とは違う部分の力が重要であることもよく分かる。