電機製品に関する米国発の環境指標が製造業に大きな影響を及ぼそうとしている。その環境指標とは、米・環境保護庁(EPA)が推進する「EPEAT」(Electronic Products Environmental Assessment Tool)である。

 EPEATは、もともとパソコンやモニタに関する環境指標で、2006年7月に運用が始まった。ところが、2012年12月にオフィス向け画像機器(印刷機/複合機/プリンタ/スキャナなど)とテレビが適用対象に追加された他、将来的に業務用サーバや携帯電話機などへの適用も予定されている。EPEAT対応は、最終製品メーカーに限らず、部品や材料のメーカーにも求められる。EPEATの影響を受ける範囲が広まっているのだ。

 業種だけではなく市場という意味でもEPEATの影響力は拡大している。当初、EPEATは主に米国政府機関の調達基準として利用される局所的な環境指標にすぎなかった。だが、最近では「米国の公共機関や民間企業もEPEATを調達基準として導入し始めている」〔EPEAT に詳しいUL Japan(本社三重県伊勢市)環境部門事業開発マネージャーの追谷武寿氏)。米国外でも、オーストラリア政府が採用した他、中国でも検討の動きが見られるという。

長期的な環境対応を促進

 EPEATの特徴は、RoHS*1やREACH*2のような規制(法律)ではなく、あくまで指標(評価ツール)であることだ。要求事項には「必須要求事項」と「オプション要求事項」の2種類があり、必須要求事項を全て満たす場合は「ブロンズ」、必須要求事項に加えてオプション要求事項の50%以上を満たす場合は「シルバー」、同75%以上の場合は「ゴールド」と3段階でランク付けされる(表1)。各要求事項の詳細は米・電気電子学会の標準(IEEE 1680ファミリー)として策定されており、これに基づいて適合/不適合を判定する。 前述の通り、規制ではないので、EPEATに不適合だからといって直ちに市場で販売できなくなるわけではない。だが、各国政府や企業で調達基準として採用する動きが加速すると、事実上の規制としても機能する。そういう意味で、日本の「グリーン購入法」に近いともいえる。

 
〔以下、日経ものづくり2013年10月号に掲載〕

表1●EPEATの要求事項
要求事項は、製品単体および企業全体の取り組みに大別され、そのうち後者は全製品共通の評価となる。
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*1 RoHS 電気・電子機器への特定有害物質の含有を禁止する欧州連合(EU)の指令。鉛、カドミウム、6価クロム、水銀、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテルの6物質について含有量の上限を定めている。

*2 REACH EU域内で流通する製品に含まれる化学物質の登録・評価をメーカーなどに義務付けるEUの規制。