「『つなげない』を『つなぐ』 最新接合技術の可能性」は今号で終了します。2013年10月号から、曙ブレーキ工業が若手技術者教育の一環として実施している研修プログラム「生産ラインのミニチュア模型製作プロジェクト」を解説します。

難しいが不可能ではない

 前回述べたように、材料接合技術は大きく3世代に分類できる。今回は、特に異種金属・合金同士の接合である第2世代、および金属と樹脂などの異種材料の接合である第3世代を中心に、各世代の現状と今後期待される技術について解説する。

第1世代:同種金属・合金間

 鉄鋼材料同士の溶接に代表されるように、同種金属・合金間の接合技術としては、基本的には一般的な溶融溶接法(アーク溶接法)が実用化されている。炭素鋼、合金鋼およびステンレス鋼など異なる鋼種間の溶接では、それぞれに発生しやすい特有の溶接欠陥があるものの、組み合わせごとに溶接施工法がほぼ確立されている1)

 良好な溶接継手を得る上で肝心良好な溶接継手を得る上で肝心なのは、それらの材料に応じた適切な溶接方法や溶接条件を選ぶということだ。ただし、第1世代の技術も既に完成形というわけではない。引き続き新たな高効率・高品質の溶接・接合法や溶接材料の開発が進められている。

第2世代:異種金属・合金間

 金属同士でも異種金属や異種合金間の接合は難しい場合が多い2)。しかし、それはあくまで「困難」であって「不可能」ではない。

 例えば、第2世代の代表的な組み合わせ例として鉄鋼材料とアルミニウム(Al)合金の異種金属接合を考えてみよう。この組み合わせは、特に軽量化が重要課題である自動車業界などで大きなニーズがある。確かに、前回解説したように鋼とAl合金の接合において溶融溶接法であるアーク溶接などを適用しようとすると、接合部に脆弱な鉄(Fe)-Al系金属間化合物が形成されるため直接接合は難しい。

 しかし、詳細は後述するが、接合条件を見極めて金属間化合物層の厚さを十分に薄くなるようにしたり、金属間化合物が形成されない摩擦撹拌接合(FSW)などを適用したりすれば接合は可能だ。

 表は、これまでに溶接学会などに報告された検討結果に基づいて、鋼とAl合金の接合における接合方法とその可能性をまとめたものだ。接合方法は、高温における金属原子の拡散現象を主体とした「熱的平衡型」と、低温で材料の塑性流動現象などを利用する「熱的非平衡型」の2タイプに大別できる。以下では、それぞれのタイプで期待される技術について考察する。


〔以下、日経ものづくり2013年9月号に掲載〕

表●鋼/Al合金の異種金属接合方法と接合界面の特徴
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1)溶接学会編,「溶接・接合便覧」,丸善,p.964,1990.

2)Welding Handbook,Vol.2,8th edi.AWS,1991.

中田一博(なかた・かずひろ)
大阪大学接合科学研究所 教授
1977年に大阪大学接合科学研究所助手となり、助教授を経て2002年から同大教授。2009年4月~2013年3月は同研究所所長。専門は、材料工学および溶接・接合工学、表面改質工学。