電波をうまく飛ばすには
前回、アンテナの基本などについてタイシ氏から学んだオーツ氏。今回は、アンテナの試作品を携え再びタイシ氏を訪れた。
タイシ(以下T)氏:「やあ、オーツ君。アンテナの試作品ができたみたいだね。さっそく性能をみてみたいところだけど、その前にアンテナの動作原理について勉強しておこう。以前、キイチから電波とは電界と磁界の波からできていると教わったよね」
オーツ(以下O)氏:「それがアンテナの動作原理と関係あるんですか?」
T氏:「アンテナには、主に電波の電界領域を用いる電界型と、磁界領域を利用する磁界型の大きく2種類があるんだ。前者は電波を飛ばすアンテナ、後者は電波を飛ばさないアンテナとも言うんだよ。まず、飛ばすアンテナから説明していくね。電源につながった、2枚の平行に置かれた金属板があったとしよう。オーツ君なら何を想像するかな?」
O氏:「今までに教わったことから考えると、コンデンサですね」
T氏:「そう。コンデンサのように電源に接続された極板間に距離がある場合、それらの間には電位差が発生する。このとき、2枚の極板の間に電気力線が発生すると考えるんだ」〔図1(a)〕
O氏:「何ですか、電気力線って?」
T氏:「電気の性質を理解しやすくするために設定する架空の曲線だよ。磁気の世界における磁力線みたいなみたいなものだね。電気力線の密度が高いほど電気の量が多いと考えるんだ。コンデンサの極板間のように実際に電気は流れないけど、交流回路としては電流が流れるような場合に便利なんだ」
電気力線は、正の電荷から発生して負の電荷に向かう連続した架空の線。極板間をあたかも電気が流れたかのように振る舞う。その結果、見掛け上は回路に電気が流れることになる。図1(a)の電源は交流なので、極性が変わると逆向きに電気が流れる(図の矢印が逆向きとなる)。この繰り返しによって、コンデンサはあたかも回路に電気が流れるような挙動を示す。従って高周波(RF)の世界では、通常、電気力線≒電流とみなす。
T氏:「では今度は、扇を開くように極板の間隔を段々広げていったとしよう。電気力線は、常に面から垂直に出て垂直に入るので、極板の間隔が扇形に広がっていくに従って、円弧を描くようになる」〔図1(b)〕
O氏:「さらに広がって2つの極板が一直線になったら電気力線は半円を描くってことですか」
T氏:「そう。そしてさらに交流の周波数が高くなると、正負の極性の切り替えが速くなって、互いに向きが異なる電気力線がほぼ同時に出現するようになる。向きの違う電流が近接するとどうなるかな」
〔以下、日経ものづくり2013年9月号に掲載〕
O2 Lab. リサーチフェロー