三重県津市の「ウインドパーク笠取発電所(WP笠取)」に設置された風力発電設備19基の1基(19号機)において、ブレードと発電機、ナセルが一体となって脱落する事故が2013年4月7日に発生した。事業者であるシーテック(本社名古屋市)が事務局となって設立した事故調査委員会では、事故機の分析や数値シミュレーションなどを実施。そこで明らかになったのは、ブレードのピッチ角を保持するブレーキの不具合だった。
事故調査委員会の報告書(以下、調査報告書)によると、事故は2013年4月7日の16時37~55分の間で発生したと推定されている1)。その日、現場付近は15時ごろから平均風速が20m/sを超え、16時27分には最大瞬間風速で42m/sを観測した*1。
このような強風にさらされてロータが過回転に陥り、さらにブレードがしなるように変形したことでタワーに接触。ナセルとタワーを結合するボルトに設計荷重を超えるせん断応力と引っ張り応力が作用したことによりボルトが破断し、ナセルが脱落した(図1、図2)
しかし、WP笠取の風力発電設備には強風時にロータが過回転とならないような仕組みが組み込まれていた。問題は、なぜこの安全機構が働かなかったか、である。
強風時には自動的に停止へ
WP笠取に設置されている風力発電設備は、長さ40mのブレード3枚をハブに取り付けたプロペラが風上を向く「アップウインド式」のものである。プロペラの回転によって発電機を駆動するが、向きや強さが変動する風を効率的かつ安全にエネルギに変換するため、垂線を軸にしたナセルの水平方向の回転(ヨー角)でプロペラの向きを、ハブに対するブレードのピッチ角によって発電機のロータの回転速度を制御する。
〔以下,日経ものづくり2013年9月号に掲載〕
*1 19号機に残された運転記録から確認した。