低価格3Dプリンタ市場において海外メーカー製品が大きなシェアを占めている中、それらに対抗し得る製品が登場した。オープンキューブ(本社横浜市)が2013年8月14日に出荷を開始した「SCOOVO C170」である(図1)。本体価格は18万円(税別)。同社が設計・開発し、群馬県内にある協力工場で組み立てるという国産の3Dプリンタだ*1

 それ故、「修理の期間が短くて済む」(同社代表取締役社長の坂口信貴氏)。多くの海外メーカー製3Dプリンタとは違い、プリント制御ソフトのメニューや操作マニュアルの表記も日本語なら、サポートの受け答えも日本語だ。こうした国産ならではのメリットを武器に、海外メーカーが先行する低価格3Dプリンタ市場での普及を図る。

初期ロットは即日完売

 2013年8月8日に先行予約を受け付けたところ、初回生産分と2次生産分(合計100台)が即日完売した*2。今後、生産体制を整えて最終的には月産300台とする予定だ。

 SCOOVOは、熱可塑性樹脂をヒータ内蔵のヘッドから吐出して立体モデルを造形する3Dプリンタだ*3。造形用の材料はPLA(ポリ乳酸)で、約10色を用意する(図2)。材料の価格は、1ロール(1kg)で4742円(税別)。最大造形寸法は高さ175×幅150×奥行き150mm、最小積層厚さは100μm、搭載ヘッドは1つだ(表)

 実は、オープンキューブは、自作パソコン向けのケースなどを手掛けるアビー(本社横浜市)の関連会社。3Dプリンタの製品化の検討を開始した当初は、アビーの主力製品である少量多品種のPCケースを3Dプリンタで造れるようになることから、アビー自身の存亡にかかわるのではないかという議論があったという。しかし、「そうなったら、逆に面白い」(坂口氏)と腹を決め、3Dプリンタの製品化を決断した。

 
〔以下、日経ものづくり2013年9月号に掲載〕

図1●オープンキューブが開発した低価格3Dプリンタ「SCOOVO C170」
図1●オープンキューブが開発した低価格3Dプリンタ「SCOOVO C170」
多くの部品が国内製で、組み立ても国内で行うため修理などのアフターサービスを迅速に行える。制御ソフトやマニュアルは日本語表記のため、初心者でも使い勝手が良い。なお、前面と両側面にある保護カバーはオプションとなる。
図2●SCOOVOで造形した立体モデル
図2●SCOOVOで造形した立体モデル
熱可塑性樹脂を可動ヘッドの中で溶融しながら吐出する。素材としては、直径1.75mmのPLA樹脂を使う。
表●「SCOOVO C170」の主な仕様
表●「SCOOVO C170」の主な仕様

*1 ほとんどの部品を国内調達する。制御ソフトなどは、3Dプリンタのオープンソース「RepRap」をベースに開発した。なお、日本メーカーによる低価格3Dプリンタとしては他に、ホットプロシード(本社福岡市)の「Blade-1」などがある。

*2 2013年10月1日に出荷開始予定の3次生産分も売り切れた。8月中旬時点では10月25日出荷開始予定の4次生産分の予約を受け付けている。

*3 ヘッドが左右(装置の幅方向)に、立体モデルを固定するテーブルが前後(同奥行き方向)に動くことで断面形状を造形する。層の高さは、ヘッドの上下方向(同高さ方向)の動きで制御する。