いまやメカ設計者もエレクトロニクスと無縁ではありません。「メカ設計者も知っておきたい エレ設計のABC ~オーツ君の成長記~」では、架空の設計現場を舞台に、製品開発をスムーズに進めるためのエレクトロニクス設計の基礎を解説します。

アンテナとは電気と電波の橋渡し

 タブレット端末兼用の薄型ノートパソコン(PC)の開発を任されたオーツ氏は、前回(2013年7月号)、開発に欠かせない高周波(RF)についてキイチ氏からレクチャーを受けた。今回は、さらにアンテナについて深く学ぶため、再びキイチ氏を訪れた。すると、キイチ氏の他に、もう1人の男性が待っていた。オーツ氏も知っている先輩技術者のタイシ氏である。

 オーツ(以下O)氏:「あれ、タイシさんも一緒なんですか」

 キイチ(以下K)氏:「実は、今日の話はタイシの方が適任だろうと思って来てもらったんだ。僕らは2人ともRF設計者には違いないけど、僕はどちらかというと回路設計が主業務で、アンテナ設計はタイシの方が詳しいんだ」*1

 O氏:「そうだったんですか。タイシさん、よろしくお願いします」

 タイシ(以下T)氏:「がんばっているらしいね。テツタロウやキイチから話は聞いているよ。君が体験する驚きや発見は、新製品開発のプロジェクトのような新しいことをやろうとする時にすごく重要だよ。新しい学びを楽しんでほしいね。では早速、始めよう」

インタフェースとしてのアンテナ

 T氏:「まず、アンテナって言うとオーツ君はどんなイメージかな?」

 O氏:「屋根の上についている魚の骨みたいなものとか」

 T氏:「屋根の上についているのは大抵テレビ受信用のアンテナだね」

 O氏:「携帯電話機に付いているものもありますね。あれ、でもそういえば最近のスマートフォンにはアンテナが見当たらないですね」(図1)

 

〔以下、日経ものづくり2013年8月号に掲載〕

図1●代表的なアンテナ
屋根などに付いているのはテレビ受信用のアンテナ。携帯電話機にもアンテナは搭載されている。かつては大きなアンテナが付いていたが、現在のスマートフォンなどでは内蔵アンテナとなっている。
[画像のクリックで拡大表示]

*1 RFにおける回路設計とアンテナ設計の分業の一因は、学問分野が「電気」と「電磁気」に分かれていることにある。専門家がそれぞれの専門分野に専念すれば効率は上がるだろうという思いがあったと考えられる。

前田篤志(まえだ・あつし)
O2 Lab. リサーチフェロー
米国で高周波(RF)技術を教える傍ら、マネジメント要素を盛り込んだ独自の「RF Management」論を構築。現在は特許工学などの講義を基に、現象論に立脚したエレクトロニクス教育の啓蒙に努める。

【会社紹介】
O2 Lab.は、設計開発領域におけるコンサルティングを手掛けるO2の研究開発部門。ビジネスシーズを新規事業にまで育て上げる顧客専属の研究開発機関である。URLはhttp://www.o2-inc.com/lab/