2013年5月号から、「250万件の特許で問題を解決する TRIZの日本式活用法」をお届けしています。旧ソビエト連邦で生まれた問題解決理論のTRIZは、1990年代に日本でブームになった後に衰退しましたが、その間、日本独自の活用法が生まれて使いやすくなりました。その中身を解説します。

アイデアは発散と収束で磨く

 第3回(2013年7月号)から、TRIZの日本式活用法の内容を具体事例と共に紹介している。

 日本式活用法の工程は、大きく3つある。自身が抱える開発課題の本質的な原因(根本原因)を突き止める「前工程」、TRIZの3つの手法(「矛盾の克服」「技術進化の法則」「科学的・工学的効果」)を用いて根本原因の解決に向けたアイデアをできる限りたくさん出す「TRIZ」工程、TRIZで導き出した大量のアイデアを整理/分類し、取捨選択したり複数のアイデアを組み合わせたりして最終的に1つの問題解決策に収束させる「後工程」、の3つである。

 第3回では、前工程と、TRIZの3手法のうちの「矛盾の克服」を取り上げた。今回はその続きとして、残り2手法と後工程を見ていく。

技術進化のパターンは19種類

 TRIZの3つの手法を今一度、確認しておこう。TRIZには、[1]問題の中にある矛盾からひもとく「矛盾の克服」、[2]技術が進化する過程に着目する「技術進化の法則」、[3]解決したい問題の機能から知識データベースを逆引きする「科学的・工学的効果」、の3つの手法がある。

 第3回で解説した[1]の「矛盾の克服」は、前工程で導いた根本原因の要素の中から矛盾する2つの要素(工学的矛盾)を見つけ、それらの要素と同じ組み合わせを「工学的矛盾マトリクス」の中から探し出すというものだった。このマトリクスを見れば、TRIZの「40の発明原理(矛盾解決策)」のうち、どれが自分の問題のヒントになるのかが分かる。

 [2]の「技術進化の法則」でも、前工程で特定した根本原因をスタート地点とする点では同じだ。しかし、技術進化の法則では、根本原因の要素間にある矛盾ではなく、1つの要素が別の要素に与える「有害作用」や「不足作用」に着目する。

 基本的には、要素間に矛盾が存在する根本原因の場合は「矛盾の克服」を実施し、矛盾が存在しないか不明である根本原因の場合は「技術進化の法則」を適用するのが得策になる。

 技術進化の法則は、大きく2つの考え方によって構成されている。「19の技術進化のパターン」と「76の発明標準解」である。まず、19の技術進化のパターンから説明する。


〔以下、日経ものづくり2013年8月号に掲載〕

前古護(ぜんこ・まもる)
アイデア 代表取締役社長
日本電装(現デンソー)入社後、パーティクル低減や新製品立ち上げなどフォトリソ工程を主とした製造技術分野に従事。1990年に同社を退社。コンサルティング会社を経た後、2003年にTRIZを中核にプロジェクト・コンサルティングによる実務テーマ解決を支援する株式会社アイデアを設立。クライアント企業は国内外を含め380社に上る。2005年から大阪産業大学非常勤講師。2013年1月から日本TRIZ協会の副理事長。

桑原正浩(くわはら・まさひろ)
アイデア TRIZプログラム担当ディレクター
カヤバ工業(現KYB)でサスペンションの開発設計、オムロンで電磁リレーの開発設計やプロジェクトマネジメントに従事後、技術問題解決コンサルタントとして独立。現在、アイデアのTRIZコンサルタントとして、国内外企業の技術開発テーマの創造的問題解決に関するコンサルティングに従事。著作物は「効率的に発明する:ロジカルアイデア発想法TRIZ」(SMBC出版)、「使えるTRIZ」(日刊工業新聞社「機械設計」連載)など。